2014年4月7日月曜日

ボクが台湾を「大っ嫌い」な3つの理由:ドイツ人が発言、動画が評判に

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サーチナニュース 2014-04-07 16:33
http://news.searchina.net/id/1529141

ボクが台湾を「大っ嫌い」な3つの理由―ドイツ人が発言、動画が評判に

 台湾で、インターネットで3日に公開された「ドイツの男が台湾を“大っ嫌い”な3つの理由」と題する動画が注目を集めている。
 7日午後4時までに閲覧回数は36万回を超えた。

 カメラに向かってドイツ人という若い男性が、
①.「台湾を大っ嫌いな第1の理由は人々がフレンドリーすぎること。
 おかげで道を覚えられない」、
②.「食べ物がおいしすぎる。
 ぶくぶくに太ってしまう」、
③.「自然が美しすぎる」などと述べ「(ドイツに)帰りたくないんだよ。
 これ以上ここにいたら、ママに殺されちゃうよ」
などと、台湾のすばらしさを“批判”した。

  3日に公開され、2日間で閲覧回数は5万を突破。
 その後、台湾のテレビで紹介されたこともあり、7日午後4時までに閲覧回数は36万回を超えた。
   画面ではワイシャツにネクタイ姿の若い男性が、
 「台湾に来て、ずいぶんたつけど、台湾が本当に大っ嫌いな3つの理由があるんだ。
 それは人、食べ物、自然さ」
と話しはじめる。
 「ドイツ人」と紹介されているが、男性は英語で語っており、中国語と英語の字幕がつけられている。

 男性はまず台湾人について
★.「フレンドリーすぎるのさ」と述べ、
「いつもボクに、何か困っていることはないかと尋ねてくる」、
「道にまようと、きっと教えてくれるんだ。だからボクは、また(同じ場所で)道に迷うことなる」
と“不満”を語った。

★.次に台湾の食べ物を“批判”。「台湾の食べ物は、おいしすぎるんだ」、
 「これ以上食べたら、ぶくぶくに太ってしまう」
と述べた。
  男性の話す言葉の一部は、「放送禁止用語」をカットするように信号音をかぶせられている。 
やや下卑た口語表現で、台湾人の性格や食べ物をおいしさを強調した部分を、わざとカットすることで、面白さを演出したと思われる。

★. 同男性は最後に、台湾の自然の素晴らしさに言及。
 「あまりにも美しすぎる」と述べた上で、
 「(ドイツに)帰りたくないんだよ。これ以上ここにいたら、ママに殺されちゃうよ」
と“ボヤい”てみせた。

  動画投稿の「仕掛け人」は、Jonny(ジョニー)と名乗る20代の台湾人。
 学生が大陸とのサービス貿易協定への抗議活動を続けていることが動機だった。
 まず、騒ぎに接したら、台湾に来た外国人は驚くだろうと思った。
 次に、将来についてあせりを感じている台湾の若者に
 「外国人が台湾を素晴らしいと思っていることを知らせたかった」、
 「そうすれば、この小さな土地に暮らす台湾人は、自らにさらに自信を持つようになる」
と考えという。

  投稿の動画では、発言したドイツ人という男性と台湾人の友人とくつろぐ様子や、緑が美しい台湾の空撮写真も、短時間であるが紹介されている。
   同動画は台湾のテレビで紹介された。
  7日午後4時までに閲覧回数は36万回を超えた。
  中国メディアの中国新聞社も同話題を紹介した。
 中国メディアは台湾の学生らによる「サービス貿易協定反対運動」を否定的に扱う場合が多いが、中国新聞社は「外国人にも台湾のすばらしさが評価された」と、台湾メディアと同様の紹介をした。




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2014年3月19日水曜日

台湾国会に学生ら100人以上が突入:大陸との経済提携に猛反発、「ほえほえくま~!」

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●19日、台湾の立法院(国会)議場で座り込む学生ら:読売新聞


サーチナニュース 2014-03-19 16:28
http://news.searchina.net/id/1527356

台湾国会に学生ら100人以上が突入、大陸との経済提携に猛反発

 台湾の国会に相当する「立法院」に18日午後9時ごろ、学生ら100人以上が突入して議場を占拠した。
 馬英九政権が批准を目指す、大陸側とのサービス貿易協定を阻止しようとした。
 警察側は19日午前3時台と5時半台の2回に分けて強制排除した。
 占拠側が激しく抵抗したため、警察官4人が負傷して病院に搬送された。
 中国新聞社などが報じた。

  学生ら100人あまりが18日午後9時ごろ、守りを固めていた立法院のゲートを突破。
 建物内に突入し、議場のガラス扉を破壊して内部に侵入した。
 突入側はサービス貿易協定に反対する垂れ幕などを用意。
 さらに、ミネラルウオーターやパンやおにぎりなどの食料、寝袋も用意しており「長期戦」の構えを見せた。

  警察側は19日午前3時37分に第1派の強制排除作戦を開始。
 しかし、占拠側に押しかえされて失敗した。警察側は午前5時23分ごろ、再び強制排除に取り掛かった。
 しかし、抵抗が激しく、約1時間にわたって占拠側が設けた障害物を突破できなかった。

  ほぼ同じ時間帯に、立法院外に集結した新たな100人が院内突入を試みた。
 警官隊と激突したが、突入は阻止された。
 院内では占拠した人々はすべて排除されたが、激しい抵抗により警察官4人が負傷して病院に搬送された。
 占拠側にもけが人が出たが、重傷者はいなかったとみられる。

  馬英九事務室の李佳霏報道官は18日時点で
 「各方面が理性的に、温和に自らの意見を表明することを希望する」と表明。
 馬総統も同日、
 「立法院の国民党議員団の、サービス貿易協定に対する努力を感謝する。
 台湾は国際社会から孤立することはできない。
 野党には台湾にとっての罪人にならないよう希望する」
と述べた。

 同協定は台湾の世論を2分する、政治上の大きな争点の1つになっている。
 賛成派は、巨大市場である大陸との提携強化を重視し、台湾側の開放の度合いも世界貿易機関(WTO)の規則と同程度で、協定により負の影響がでる業種についても、良性の競争をもたらすと主張。
 反対派を「貿易保護主義」とする批判もある。
 反対派は、協定締結に至る過程に不明な点が多いことや、立法院における強引な勧め方を指摘。
 経済面では「恩恵を受けるのは大企業だけ」との指摘もある。
 さらに同協定は台湾側の印刷出版業を大陸資本に開放する内容が盛り込まれているので、「言論の自由が損なわれる」との主張もある。

  馬英九総統は同協定について2013年9月時点で「条文ごとに審議し、条文ごとに評決する。一括評決はしない」と表明。
 野党側との話し合いの結果だった。
  3月下旬になり「一括評決はしない」との前言をひるがえしたため、反対派が反発を強めた。国民党所属の張慶忠律法委員(議員)は17日、議場内で「法律にもとづき、審議は終了した」と宣言。
 馬英九政権側は「張慶忠議員の苦労に感謝する」と表明したため、反対派がさらに態度を強硬にした。  
 台湾最大野党の民進党は張議員の発言は認められないとして、一部参加者のハンガーストライキを含む、 「立法院120時間包囲」のデモを続けている。
 次の開会となる3月21日には「全民による立法院包囲」を実施する考えだ



(2014年3月19日21時58分  読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20140319-OYT1T00922.htm

台湾立法院、学生が占拠…中台貿易協定に反対

 【台北=比嘉清太】
  台湾の立法院(国会に相当)で18日夜、中台間でサービス分野の市場開放を進める「サービス貿易協定」(昨年6月調印)に反対する民間団体の学生ら数百人が、警官隊を突破して敷地内に突入、議場を占拠した。
  台湾の中央ラジオ局などによると、
 民衆による議場の占拠は初めてで、
支持率が低迷する馬英九(マーインジウ)総統にとって痛手となりそうだ。
 学生らは協定の撤回などを要求して占拠を続ける構えだ。

 同協定は中国側が金融や医療など80分野を、台湾側が運輸や美容など64分野を開放する内容。
 台湾側では中小企業へのダメージが大きいとの懸念が根強く、野党は反対し、立法院での承認手続きが大幅に遅れている。
 中国側は早期発効を求めており、手続きがさらに遅れれば、年内妥結を目指す別の中台経済協定の協議に影響する可能性がある。



CNN ニュース 2014.03.20 Thu posted at 11:23 JST
http://www.cnn.co.jp/world/35045460.html?tag=top;topStories

台湾で学生らが立法院占拠 中国との貿易協定に反対


●台湾の立法院前に集まった学生ら

(CNN) 台湾の立法院(国会)が18日夜から19日にかけて、与党・国民党が推進する中国との貿易協定に反対する数百人の大学生らによって占拠された。

 議場内に入った学生らは入り口に椅子でバリケードを築いて立てこもっており、立法院の周辺には多くの支持者が集まっている。

 学生らが反対しているのは、昨年、中台が上海で調印したサービス貿易協定。
 中台間の投資や貿易を容易にするという内容だが、これには台湾経済への悪影響や、大陸との関係強化による台湾の民主制度の弱体化を懸念する声が上がっている。

 学生らは、協定の承認法案が審議される予定の21日まで占拠を続ける予定だという。

 台湾の国営通信社によれば、学生らが乱入したさいに制止しようとした警察官38人がけがをしたという。
 占拠側の4人が逮捕された。警察によれば、立法院の内外には2000人を超える学生や支持者がおり、警官も同数程度が配備されたという。

 対中関係は2008年に馬英九(マーインチウ)総統が就任して以降、改善が進んでいる。
 先月には初の閣僚級会談が行われ、中国の国営新華社通信によれば双方は定期的な対話を行うことで合意したという。



サーチナニュース 2014-03-23 11:20
http://news.searchina.net/id/1527595

ほえほえくま~!―日本人が「大陸との協定反対」を応援=台湾報道

 台湾では、馬英九政権が進めている中国大陸とのサービス貿易協定締結阻止を目指す学生らが18日夜から、立法院(国会議事堂)議場を占拠している。
 学生側を支持する日本人は、「ほえほえくま」というキャラクターを作り、インターネットに次々に掲載。
 自由新報、アップルデーリーなどの台湾メディアは
 「日本のネットユーザーが萌(もえ)でサービス貿易反対、ほえほえくま参上」
などと報じた。

 サービス貿易協定に反対する学生らが繰り返すスローガンの「退回服貿(トゥエイホェイ フーマオ=サービス貿易撤回)」が、日本人に「ほえほえくま」と聞こえたことから、学生側を支持する日本人が、「主張する熊」のイラストを作ったとされている。
 「台湾(中華民国)国旗を振る熊」、
 「スーパーマンのように、台湾国旗のデザインのマントを着用した熊」、
 「熊の着ぐるみの少女が日本と台湾国旗を持ち、『加油(がんばれ)』の文字を加えたイラスト」、
 「中国大陸を象徴すると見られるパンダを蹴(け)り倒す熊」
など、さまざまなイラストが公開された。

  台湾メディアは「ほえほえくま」の由来を解説し、「吼吼熊」などと翻訳して紹介。
 日本側の動きについて
 「絵の得意な日本のネットユーザーのグッドアイデア」、
 「多くのほえほえくまの図案を製作して台湾の公民運動を支持」、
 「多くの台湾のネットユーザーが、『日本は台湾の真の友だ』と表明している」
などと報じた。
 **********

 ◆解説◆ 
 中国大陸とのサービス貿易協定は、原発問題とならび台湾世論を2分する大問題だ。
 サービス貿易協定については、当初から賛否両論があり、激しい議論が戦わされてきた。 
 反対側が問題視するのは、協定の内容だけでなく、馬英九政権側の協定締結に向けた進め方の不透明さや強引さだ。
 具体的には、政権側は野党との話し合いにもとづき2013年9月時点で「条文ごとに審議し、条文ごとに評決する。
 一括評決はしない」と表明したが、14年3月になり「一括評決はしない」との前言を翻したなどがある。

  議場を占拠した学生側は議場内で取材に応じるなどで、
 「行政権が大きすぎ、三権分立の立法院による監督機能が効力を失った」、
 「国民党の議員が多く、多くの委員会で強制的に主導している」、
 「台湾の民主主義は国民党の強力なコントロールのもと、基本的に効力を失った」
などと主張。
 原発問題にも言及し(国民党は推進派)、サービス貿易協定など個別の問題だけでなく、国民党が民主主義を踏みにじったことがそもそもの問題点との考えを示した。
  馬英九政権については、多くの人が不満を持つ状態が続いている。
 2013年秋ごろから馬総統に対する支持率が10%に満たない状態だ。

 なお、中国語の標準語(普通話)では「退回」の発音が一般に、カナ表記では「トゥイフイ」に近い音になる。
 台湾の標準語である「国語(グオユー)」も、かつて官僚らが用いていた「北京官話」が起源であり、大陸側の「普通話」とおおむね同じ言葉だが、発音に古い特徴を比較的多く残しており、「退回」も「トゥエイホェイ」に近い音になることが多い。 








毎日新聞 2014年03月27日 22時19分
http://mainichi.jp/select/news/20140328k0000m030133000c.html

台湾:立法院占拠 学生側 「無期限占拠」を宣言

 【台北・鈴木玲子】台湾が中国と昨年調印した「サービス貿易協定」の承認に反対する学生が立法院(国会)議場を占拠している問題で、学生側は27日、協定撤回の意思を示していない馬英九政権の対応に「誠意がない」として議場の「無期限占拠」を宣言した。
  30日に総統府前や立法院周辺で大規模抗議集会を行うことも発表。学生や賛同する各種団体に結集を呼びかけた。

 学生側は25日、馬総統の対話の呼びかけに一時は応じる姿勢を見せたが、その後態度を硬化させた。
 対話の前提として中台で協定を結ぶ前に内容などを監督する機能の法制化などを求めている。






2014年3月11日火曜日

東日本大震災から3年、大災難に遭遇して知った台湾の好意と善意

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サーチナニュース 2014-03-10 22:57
http://news.searchina.net/id/1526425

東日本大震災から3年、大災難に遭遇して知った台湾の好意と善意

 三陸沖を震源として巨大地震が発生、東日本大震災を引き起こしたのは2011年3月11日の午後2時46分だった。
 日本にとって極めて大きな災難だった。
 日本人の心は暗く沈んだ。
 しかしそんな中で、台湾が示してくれた絶大な好意は多くの日本人の心に「希望」の2文字をもたらしてくれた。

  当時の状況を振り返ってみよう。
   大津波が発生したこともあり、多くの人が命を失った。
 財産も失われた。
 地震にともない発生した福島第一原発の事故で、今なお故郷に帰れず、また行方不明の親族の捜索もかなわない人が多くいる。
 為政者が「想定外」を逃げ口上にするのは許されることではないが、多くの日本人にとって「想定外」の事態が発生したことは厳然たる事実だった。
  状況の推移は決して楽観できなかった。
 日本人の心は暗く沈んだ。

 しかしそのような中でも、人々を勇気づけてくれる明るい希望の光はあった。
 そのひとつが世界各地から寄せられたさまざまな支援だ。
  中でも多くの日本人を驚かせ、喜ばせてくれたのが台湾からの義捐金(ぎえんきん)の多さだ。
 もちろん、金額の多寡で単純に、感謝の気持ちに差をつけてよいわけではない。
 何らかの手を差し伸べてくれたこと自体がありがたいことだ。
 しかしそれにしても、台湾からの義捐金の多さに、多くの日本人が驚いた。
 もともと、親日的な雰囲気が濃厚ということは、比較的知られていた。
 しかしそれにしても、最終的に200億円を超え、世界最多になったことなどが伝えられると、多くの日本人が逆に
  「いったいどうしてそこまでしてくれるのか」と驚いた。

 義捐金や支援物資だけでなかった。
 台湾の馬英久総統は地震発生の11日、「日本側の要請があれば、ただちに派遣したい」として、救援隊をいつでも出動可能な状態にして待機させた。
 しかし、台湾の救援隊は丸2日間も待機させられることになった。
 後になり、
 「日本側当局が国交のない台湾の救助隊を現地に『一番乗り』させたのでは、政治的に差しさわりが出ると判断したらしい」
などと伝えられると、日本人の多くが、自国政府に対する怒りを感じた。
 そして、台湾や台湾人に対して申し訳ない気持ちになった。
 台湾との関連で日本人が違和感を感じたのはそれだけではない。
 2012年の大震災1周年の追悼式典で、台湾の代表は世界160カ国と国際機関の代表のために用意された席ではなく、企業代表などの席をあてがわれた。
 指名献花からもはずされた。
 やはり、多くの日本人が違和感と憤りを感じた。
 
  さまざまな状況を通じて、日本人の台湾に対する関心と好感度が高まった。
 そして、「なんとかして台湾の人々に、感謝の気持ちを伝えたい」との気運も高まった。
  その象徴的な例が、2013年3月8日に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)予選第2ラウンドの日台戦だった。
 だれから指示されたわけでもない。
 東日本大震災時の台湾からの支援に対する感謝の気持ちをプラカードで示そうと考えた日本人ファンがいた。
 観客席のあちこちで「謝謝台湾(台湾、ありがとう)」などと書いたプラカードが掲げられた。  この日本人側の動きは台湾でも広く伝えられた。
 今度は、日本人が台湾に対する感謝の気持ちを示したことで、台湾でもインターネットで「感動した」といった書き込みが、次々に寄せられた。
 それだけではなかった。
 試合は日本が押されていた。3回に先取点を許し、9回表にようやく3:3と追いついた。
 そして延長10表に1点を追加し、4:3と逆転。
 10裏の台湾の攻撃を無得点に抑えてかろうじて逃げ切った。
   台湾球界は日本を「野球先進国」として尊敬してきたという。
 いや、そういう事情がなかったとしても、スポーツ選手として勝利を目前にして逆転負けしてしまったことは、悔しくてしかたなかったはずだ。
 落胆の気持ちは想像するにも余りある。
  しかし台湾チームは試合後、観客席に深々とお辞儀をして感謝と敬意を示してくれた。
 これには日本人が驚いた。
 日本人と台湾人が互いに相手を「尊敬できる人々、信頼できる人々」と強く思った瞬間だった。

  東日本大震災は日本、そして日本人にとって極めて大きな災難だった。
 失われた多くの命は、2度と取り戻すことができない。
 発生前の暮らしを、今なお取り戻せない人も多い。
 それでも、台湾の人々が日本に示してくれた好意と誠意は、多くの日本人を感動させてくれた。
  それにしても、多くの日本人にとって不思議だったのは、大震災に際して台湾人がどうしてそこまで、日本を助けようとしてくれたかということだった。

 そのことを端的に語ってくれたのが、台湾の李登輝元総統だ。
 直接の発端は1999年9月21日未明に発生した台湾中部大震災に対する日本の支援だった。
 日本の救助隊は外国からの救助隊としては最も早く、地震発生当日の夕方には台湾入りした。
 人数も145人と最大規模だった。
 李元総統によると
 「決して私たちは孤独ではない。日本をはじめとする国際社会からの関心と協力が、どれほど私たちの支えになったことだろうか」
と、当時を振り返った。
 ちなみに台湾中部大震災が発生したのは李元総統の在任時だった。
 李元総統は日本からの支援をただ「ありがたく受け取って」いただけではない。
  日本は国会議員の働きかけで、阪神淡路大震災時に使用した仮設住宅約1000棟を台湾に贈った。
 ただ、日本から贈られた仮設住宅は台湾側が別に用意した仮設住宅より小さく、見劣りがした。
 そこで李総統は「日本人の面子(メンツ)を傷つけてはならない」と考え、家電製品を手配して日本からの仮設住宅に配備した上で、被災者に供給した。
 台湾の被災者の日本に感謝する気持ちが減じないようにとの、心配りだった。
  1999年の台湾中部大震災、2011年の東日本大震災と、日本と台湾は共に自然からの大きな打撃を受けたが、相互に「人の善意の循環」を実現することになった。
   しかし李元総統は、自分のさまざまな配慮を鼻にかけるようなことは一切していない。
 それどころか、東日本大震災に対しての台湾の支援については「(日本に)少しは恩返しできただろうか」と、あくまでも謙虚に語った。




2014年3月10日月曜日

台湾で原発の是非が政局の焦点に、「建設強行」と馬英九批判も

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サーチナニュース 2014-03-10 13:03
http://news.searchina.net/id/1526363

台湾で原発の是非が政局の焦点に、「建設強行」と馬英九批判も

 台湾では11月29日に、主要地方自治体7カ所の首長を決める統一地方選挙(七合一選挙)が実施されるが、台湾で4番目となる龍門原発(核四)の建設の是非が、政局の大きな焦点になる可能性が高まってきた。
 馬英九政権側が2013年3月に「8月を目途に住民投票を行う」と表明しながら、住民投票について言及しなくなったことで、「反原発」の動きにおいて「政権批判」の色彩が強まった。
 自由電子報などが報じた。

 台湾では1970年代に原子力発電所の3カ所建設が始まった。
 それぞれ核一、核二、核三(日本では第一原子力発電所などと呼ばれる場合も)と呼ばれる発電所は80年代半ばまでに商業発電を開始した。
 いずれも政権・政策批判が許されない国民党の独裁時代だった。
 台湾北部の新竹市の貢寮区での核四(第四原発)建設が最初に計画されたのは1966年だったが、中断や計画変更、反対運動の高まり、さらに建設中の事故などが続いた。

 馬英九政権は中華民国歴100年の2011年に「建国100周年行事」として運転開始を目指していたが、2010年3月に1号機中央制御室で大規模な火災が発生したなどで実現できなかった。
  反対運動の高まりには、1999年9月の茨城県東海村での臨界事故、02年の東京電力の原発損傷隠蔽発覚、11年の新潟県中越沖地震による柏崎刈羽原子力発電所全面停止、さらに2011年3月11日の東日本大震災に起因する福島第一原発事故など、日本で発生した一連の問題や事故で、原発の安全性や原発をめぐる企業体質などについての不信感が高まったことも関係した。

  台湾・馬英九政権は2013年2月下旬、「核四」の建設について台湾全住民による住民投票で建設の是非を問う方針と表明した。
 2004年施行の「公民投票法」による民意の問い直しだ。
  ところが、馬英九政権は2013年8月に住民投票を実施する考えを表明したにもかかわらず、その後、住民投票について「音沙汰なし」になってしまった。
 このことも、原発反対派を大きく憤らせた。

  なお、2013年3月9日には、参加者10万人の「309全国廃核遊行(全国原発廃絶デモ)」が行われた。
 同デモでは女優のリン・チーリン(林志玲)さんらが呼びかけ、イーサン・ルアン(阮経天)さん、チャン・チェン(張震)さん、ティファニー・シュー(許ウェイニン)さん、伊能静さん、ニウ・チェンザー(鈕承澤)さん、ウー・ニエンジェン(呉念真)さんなど多くの有名芸能人が積極的に参加したことでも注目を集めた。(「ウェイ」は王へんに「韋」、「ニン」は「密」の「山」部分が「用」)
  また、観客動員数が世界最大とされる人気のバンド「Mayday(メイデイ、五月天)」が2013年に発表した映画「NOWHERE ノアの方舟」のストーリーを「『新エネルギー』施設の強引な建設が人類を破滅に導いた」としたことも、反原発のメッセージと見られている。
 同バンドでは特にマサ瑪莎さんが、反原発の立場を鮮明にして、デモにも参加している。
  台湾の「反原発」運動には、多くの芸能人が次々に賛意を表明するとの特徴がある。
 デモなどでは極めて強く意見を主張するが、総じては理性的に行動をしている。

 14年になってからも、3月8日に各地で反原発のデモが行わるなど、反原発の動きは衰えることがない。
 8日には雨が降った台北でも、各メディアによると反原発デモに5万人が参加した。
 ただし警察発表は2万人強だった。
  芸能人による反原発運動で中心的存在のひとりである柯一正さん(1946年生まれ)は8日に台北市内で実施したデモに際して馬英九総統を
 「ありがとう。あなたは私の活力のもとだ。
 私はもともと反原発であるだけだった。
 ところがあなたが(核四の建設を)強行しようとするものだから、私は反馬英九になった」
と批判した。

  他のデモ参加者からも、「この1年で政府には失望した」との声が聞かれた。
 馬英九政権の対応の悪さで、「反原発運動」が「反政権運動」の色彩を強めることになった。
  台湾では11月29日に、7地域の首長を決める「七合一選挙」が実施される。与党:国民党からは、「七合一選挙」まで馬政権は原発について「身をひそめる」との見方が出ている。
 「核四」についての住民投票問題は「触るとやけどをする不発弾」と化しており、最大野党の民進党が追及を始めた場合に、政権側にとっては極めて厳しい状況になるからという。
   なお、台湾では「原住民(先住民)が多く住む地域に原発を作っている」との非難が出ている。
 産業の発達が滞りがちな地域に対して電力会社などが利益を誘導して原発建設を進める構図だ。  台湾原住民とは中国大陸から漢人が来るはるか以前から台湾に住んでいた人々を指す。
 「先住民」の語は中国語で「前にはいたが、今はいない」とのニュアンスがあり、「原住民」が正式用語とされている。


 台湾で1970年代から80年代にかけて建設された原発、「核一」から「核三」までは、すべて米国製だった。
 「核四」は日立製作所、東芝、三菱重工業など日本からの「輸出原発」だ。
 そのため、日本でも台湾への原発輸出に反対する声が出た。
 台湾で賛成派と反対派が厳しく対立していることを理由に、原発輸出が「台湾の日本非難」を誘発するとの見方も出た。
  原子力発電所は軍事上、恰好の目標になりうる。交戦相手の原発をミサイル、航空機、その他のの手段で破壊すれば、通常兵器による攻撃であっても核兵器と同様、場合によってはそれ以上の被害を与えることができるからだ。

  台湾の対岸である福建省では、寧徳原発の1号機が2013年に運転を開始。
 同原発では最終的に6基を稼働させる計画で、さらに福州市福清でも原発が建設中だ。
  仮に中国が台湾に武力侵攻した場合、台湾にとって純粋に軍事的方法論としては、中国大陸の原爆を攻撃するという選択肢がありうる。
 国際的に極めて大きな非難を巻き起こすことは確実で、実際にはほとんどありえない可能性としても、中国としては考慮せねばならない問題だ。

 しかし台湾にすでに原発があることから、中国にとっては「台湾による原発攻撃」に対する報復手段が存在することになる。
 中国が台湾に近い福建省などに原発を建設しつつある背景には、
 「台湾の攻撃を心配する必要はほとんどない」
との判断が働いていると考えてよい。
  日本の場合も、原発は国防上の大きな弱点になりうる。
 反応ユニットをミサイル攻撃に耐えるように設計しても、水の供給ができなくなっただけで大事故につながることは、東日本大震災でも示された。
   ただし日本では、国家の安全保障を強調する政治勢力が原発の推進に積極的であるるなどの“ねじれ現象”が存在する。



2014年2月27日木曜日

台湾で「北京側に民進党、現職党首の『消滅計画』あり」説:中国政府「反論の価値もない」



サーチナニュース 2014-02-27 11:05
http://news.searchina.net/id/1525363

台湾で「北京側に民進党、現職党首の『消滅計画』あり」説・・・中国政府「反論の価値もない」

 台湾最大の野党、民進党(民主進歩党)は5月、主席(党首)選挙を実施する。
 台湾では最近になり、「北京には5月の主席選に際しての『滅蘇計画』がある」との噂が駆け巡った。
 「中国側に、蘇貞昌主席の再選を阻止し同主席を消滅する具体的方策がある」との説だ。
 中国政府組織である国務院台湾事務弁公室の馬暁光報道官は26日の定例記者会見で、
 「根も葉もない話と認識している。反論の価値もない」
と述べた。

 同説を初めておおやけにしたのは、財団法人・台湾智庫の諮問委員を務める董立文博士とされる。
 董博士は1964年生まれで、民進党で大陸関係の実務を担当する大陸事務部の主任を務めたこともある。
  董博士は民進党内で「北京には5月の主席選に際しての『滅蘇計画』がある」と発言。
 中国共産党あるいは中国政府に蘇貞昌主席の再選を阻止し抹殺する何らの具体的方策がある」との説だ。
  台湾メディアは「滅蘇計画」説を「驚爆(驚き爆発)」などと報じた。
 蘇主席は同説を
 「私は計画を知らないし、報告も見ていない。
 しかし董氏の説は、極めて理が通っている。
 私は台湾の主権を堅持しているから、大陸が私を歓迎するわけがない」
と述べた。

  蘇主席は、
 「北京が挑発して罵(ののし)ることは、よくある話
と問題にしない考えを示した。
 「滅蘇計画」の噂の主席選に対する影響については
 「(私にとって)有利になるか、不利になるかはわからない。
 ただ、私の立脚点は台湾にとって有利になることだ」
と述べた。  
 同噂に関連して、大陸側が民主党主席として「ポジティブなエネルギーを持つ人物が好ましい」と考えているとされる。
 蘇主席の有力な対立候補とされる謝長廷氏は、自分が中国側の言う「ポジティブなエネルギーを持つ人物」とはかぎらないと主張。
 「そもそも、だれが主席に当選してもおかしくない。
 蔡英文氏になるかもしれない」
と述べた。

  国務院台湾事務弁公室の馬暁光報道官は26日の定例記者会見で、
 「台湾ではこの問題についてすでに、多くの公正な批評が出ている」
と、同説が台湾でも認められていないとの考えを示した上で、
 「根も葉もない話と認識している。反論の価値もない」
と述べた。

  董立文氏が「滅蘇計画」の存在を主張した理由は不明確だ。
 ただし、中国は江沢民政権時の1996年、台湾での総統選で「独立派」とみなす李登輝総統の再選を妨害するため、選挙時期に合わせて「海峡九六一」と称す軍事演習を実施、ミサイル発射などをおこなった。
  ただし、同威嚇により台湾選挙民に「台湾と中国は別。守らねばならないふるさと」との愛郷意識が高まったこともあり、李登輝総統は再選されることもあった。
 同選挙は台湾、さらに中華社会にとって初めての、直接選挙で民意を反映させる指導者選出だった。
**********

 蘇貞昌主席は2005年1月15日から同年12月3日に第11代民進党主席を務めた。
 陳水扁政権時の06年1月25日-07年5月21日には行政院長(首相)を務めた。
 12年5月30日からは第14代民進党主席。  
 謝長廷氏は2000年4月20日から02年7月21日まで民進党主席を務めた。
 陳水扁政権時の05年2月1日から06年1月25日までは行政院長。
  両氏とも民主党党内派閥の「福利国連線」に属していた。
 ただし民進党では現在、派閥活動が禁止られている。
 福利国連線の名は「福利国(福祉国家)を築き、新たな台湾を建設する」をスローガンにしていたため。

 対中国政策では李登輝元総統の考えに準じ、具体的な独立の動きは控え、現状を維持しつつ台湾の独自性を発揮するとの立場だ。
 民進党は現在の憲法(中華民国憲法)は「国民党政権下で、民主的な手続きが不備なまま制定されたもの」として否定的な姿勢を取り続けている。
 しかし謝長廷氏は、手続き上、改憲が極めて困難であることと、現行憲法が人権についても十分に配慮し、台湾社会に受け入れられていることを理由に、国民党に憲法に反する言動が目立つことを批判すべきと主張。
  さらに「中国と台湾は別の憲法を持ち、それぞれが60年、社会を営んで来た歴史の事実」を重視すべきとして、中国との関係は「互いの憲法を認め合う」ことが重要と主張している。
 中国は民進党を「本質的な独立派」として警戒しているが、謝氏は中国共産党とも対話を行う、民進党内では珍しい存在だ。
 蔡英文氏は2008年5月20日から12年2月29日まで、第12、13第の民進党主席を務めた。
 同党初、しかも中華圏で政権担当経験のある政党として初の女性党首だったが、12年の総統選で国民党の馬英九候補(同党主席)に敗北した責任を取って辞任した。 



2014年2月24日月曜日

李登輝・元台湾総統インタビュー:日本は、世界のためにアジアの指導者たれ

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●インタビューに応じる李登輝氏(撮影・淺岡敬史、以下同)


WEDGE Infinity 2014年02月24日(Mon
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3603

李登輝・元台湾総統インタビュー
日本への期待 安倍総理への期待

 日本統治時代の台湾で育ち、京都帝大で学び、学徒出陣で戦地にも赴いた。
 武士道を愛し、日本人よりも日本人らしい精神性を体現する李登輝元総統には、いまの日本がどのように映るのか。靖国から憲法まで縦横無尽に語り尽くす。

─昨年末に安倍晋三総理が靖国神社を参拝しました。

 国のために命を捧げた英霊に国の指導者がお参りをするのは当然のことで、外国から口出しされるいわれはない。
 私の兄も海軍志願兵として出征しフィリピンで散華したため靖国神社に祀られている。
 これは政治の問題ではなく魂の問題だ。

 私も総統在任中、台北にある忠烈祠に春秋の2回、参拝に行った。ただ、ここに祀られているのは抗日戦争で亡くなった大陸の国民党の兵士であって、台湾とは全く関係がない。
 しかし、私は大きな愛でもって彼らの霊を慰めるためにお参りに行った。

─アベノミクスは、一貫して高く評価していますね。

 為替の切り下げが重要だということを私は十数年前から言ってきたが、やり切る政治家がいなかった。

 経済成長の道は、
1].国内消費、
2].投資、
3].輸出、
4].そしてイノベーション
の4つ。

 日本は、台湾と同じく、資源を持たない。
 しかし、新しい製品をつくる技術と開発力がある。
 このような国にとっての柱は輸出であり、為替が重要だ。
 為替切り下げは近隣窮乏策だという人がいるが、そうならない。
 輸出が増えると輸入も増える。

 しかし、これまでの日本の総理は、中国や韓国、あるいは米国からの批判の心配ばかりしてきた。
 日本国民の指導者だという考え方がなかった。
 国際社会における経済的自立、精神的自立こそがデフレ脱却の鍵だ。

─世界経済の今後について、どう見ていますか。

 私はこれからの国家経済運営において、
 中国の国家資本主義的「北京コンセンサス」も、
 米国の新自由主義的「ワシントンコンセンサス」も
うまくいかないと見ている。

★.北京コンセンサスは、外国の資本と技術を頼りに、国内のあり余った労働者を活用する手法だ。
 成長率は高くても、中産階級は生まれず、格差に国民の不満が渦巻いている。  

★.「小さな政府」を志向し、国境を越えた資本の自由な移動を推進するワシントンコンセンサスも問題が多い。
 グローバル資本主義はこれまで世界経済をダイナミックに拡大させてきたが、金融市場の不安定性、所得格差拡大と社会の二極化、地球環境汚染の加速や食品汚染の連鎖といった本質的欠陥を解決できていない。

 私は、12年間の台湾総統時代、まず農業の発展に力を注いだ。
 そして、農業が生み出した余剰資本と余剰労働力を活用して工業を育成した。
 国家が基礎になって、国内の資源配分を行うこの経済運営は、日本がモデルになっている。

 経済発展は、元手となる初期資本をどこから生み出すかにかかっている。
 西欧は植民地から奪うことができたが、アジアの国々は地租を基礎にするしかない。
 日本の戦後の傾斜生産方式はその代表例だった。

 今後も、グローバル資本主義にただ任せておけば国内の経済が良くなるという可能性はあまりない。
 個別国家の役割は依然として重要で、とりわけ指導者の責任は重い。
 その意味で、安倍総理が打ち出している「3本の矢」を高く評価している。

─中国や韓国は安倍政権の外交政策を批判しています。

 安倍総理が就任早々、大胆な金融政策を打つと同時に、東南アジアを歴訪したのは素晴らしいことだ。
 中国や韓国の理不尽な要求に屈せず、アジアで主体性を持った外交を展開しようとしている。
 日本は、世界のためにアジアの指導者たれ、です。

 これからの世界の安全保障環境をもっともよく分析しているのは、イアン・ブレマーの「Gゼロ」だろう。
 中国には国際秩序を維持しようという意思はない。
 周辺国の内政や領土への干渉を繰り返し、力を誇示している。
 米国がこのままリーダーシップを失えば、世界はリーダー不在の時代になる。
 アジアや中東では地政学的リスクが拡大するだろう。

 国際政治の主体は国家である。
 複雑な国際環境に面して、国民を安全と幸福に導き、平和を享受できるかどうかはひとえに指導者の資質と能力にかかっている。

 指導者のリーダーシップという問題に、この20年間、日本は苦労し続けてきたが、安倍総理は経済政策にしても外交にしても大変よくリーダーシップを発揮していると思う。

─憲法改正をどう考えますか。

 私は、これまでも憲法9条は改正すべきだとはっきり言ってきた。

 国際政治では、それぞれの国家に対して強制力を行使できる法執行の主体は存在しない。
 国防を委ねることができる主体が存在しない限り、政策の手段としての武力の必要性を排除することは考えられない。
 戦争が国際政治における現実にほかならないからこそ、その現実を冷静に見つめながら、戦争に訴えることなく秩序を保ち、国益を増進する方法を考えるのが現実的見解だ。

 日本は、憲法改正という基本的な問題を解決しなければ、どのような問題に対しても国の態度をはっきりさせることができない。

■指導者は孤独に耐えよ

─指導者がリーダーシップを発揮するために何が必要でしょうか。

 信仰です。
 本物の指導者は常に孤独だ。国家のために尽くしていても、反対勢力やメディアから批判される。
 孤独に耐えるには、強い信仰が必要だ。
 それが、あらゆる困難を乗り越える原動力になる。

 最近の日本には、国民や国家の目標をどこに置くかについてきちんと考えを持った指導者がいなかった。
 安倍総理は違う。
 彼には彼なりの信仰があるように私には思える。

 私の場合は、キリスト教という信仰があった。
 私はもともと農業経済の学者でした。
 40代で奨学金を得て、米コーネル大学に留学し、そこで書いた博士論文が評判になった。
 当時、台湾では土地改革をめぐって農業問題が深刻になっており、行政院副院長(日本の副首相にあたる)を務めていた、蒋介石の息子、蒋経国に呼ばれ、自分の考えを説明する機会があった。
 そして、蒋経国が行政院長(首相相当)に就いたとき、政務委員(国務大臣相当)として入閣することになった。
 48歳の時です。

 6年間政務委員を務め、その後6年間、台北市長や台湾省主席を経験したのち、蒋経国総統から副総統に指名された。
 そしてその4年後、蒋経国が亡くなり、憲法の定めで総統に就任した。
 なぜ私のような人間が、蒋経国に抜擢され、総統になったのか。
 それは神のみぞ知る、です。

─「万年議員」を引退させたり、総統選挙を直接選挙にしたりと、大改革を次々実行しましたね。

 私はもともと学者だから、権力もお金も派閥もなかった。
 そういう人間が改革をやろうとしたものだから、困難ばかりで、夜も寝られなかった。
 国内では既得権者と闘い、対外的には大陸中国との問題があった。 

 そうした困難な事態に直面したとき、私は必ず聖書を手にした。
 まず神に祈り、それから聖書を適当に開いて、指差したところを読み、自分なりに解釈して神の教えを引き出そうとした。
 自分を超えた高みに神が存在していて助けてくれる。
 そのような信仰が、一国の運命を左右する孤独な戦いに臨む指導者を支えてくれる大きな力となる。

─日台関係をどう見ていますか。

 台湾に対して日本は長い間冷淡だった。
 しかし、司馬遼太郎さんが「街道をゆく」で台湾紀行を書いたり、中嶋嶺雄さんが「アジア・オープン・フォーラム」を開いたりしたおかげで、少しずつ関係は改善した。

 そして、安倍総理がフェイスブックで「友人」と発言し、懸案の漁業協定締結にもこぎつけてくれた。
 これらは、ここ40年間日台間に存在した表面的な関係を具体的な形として促進したものと言える。

 残る課題は日本版「台湾関係法」の制定だ。
 日本は日中国交正常化に伴う中華民国との断交以来、日台交流の法的根拠を欠いたままだ。
 国内法として台湾関係法を定め、外交関係を堅持している米国を参考にしてほしい。
 これは、今後「日米台」という連合によって、新しい極東の秩序をつくる上で、良い礎となる。

(聞き手/編集部 大江紀洋)
◆WEDGE2014年2月号より




台湾を揺るがす“政治素人”「柯文哲現象」とはなにか:既存システムに対する不信感の代弁者

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レコードチャイナ 配信日時:2014年2月23日 22時6分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=83667&type=0

台北市長選挙がもうヒートアップ、
台湾を揺るがす“政治素人”「柯文哲現象」とはなにか


●台湾の台北市長選挙がヒートアップしている。焦点となっているのは、台湾大学病院の外科医、柯文哲だ。世論調査によると野党候補としての人気はダントツのトップ。

 台湾の台北市長選挙がヒートアップしている。
 焦点となっているのは、台湾大学病院の外科医、柯文哲(カー・ウェンジャー)だ。
 世論調査によると、野党候補としての人気はダントツのトップ。
 実は台北市長選挙が行われるのは今年の12月頃でまだまだ先の話なのだが、ずぶの素人が政治の世界に乱入したことで一つの社会現象にまでなっている。

 こうした「柯文哲現象」については、すでに朝日新聞1月17日朝刊の記事「台湾政界、素人の乱 台北市長選、54歳医師が有力」で報じられている。

 台北市市長といえば陳水扁、馬英九と現職、前職の総統を生み出した政治の要衝。
 医師出身の政治素人が台湾政界の台風の目となるのだろうか?

■既存の政治社会システムに対する不信感の代弁者

 柯文哲は1959年生まれ。
 祖父は日本統治時代に中学校の教師をしていたが、二二八事件で拷問され、釈放はされたものの1950年に亡くなった。柯文哲が生れる前のことである。
 彼の父親は二二八事件受難遺族としての暗い記憶を抱えているため、息子が政治の世界へ入ることには反対しているという。

 台湾では戦後しばらく国民党による一党独裁が続いたが、そうした権威主義体制がもたらした二二八事件や白色テロといった恐怖政治に対する批判として民主化運動が胎動、政治体制の中枢は外省人によって独占されていたことへの反発から台湾独立の主張もここに重なった。
 1986年には民進党が結成され、中台統一派の泛藍陣営(国民党や、国民党から分裂した新党、親民党など)、台湾独立派の泛緑陣営(民進党や李登輝を支持する台湾団結連盟など)という二大勢力が対立する政治構造が形作られてくる。

 柯文哲は二二八事件受難遺族に生まれたという出身背景から分かるように、政治意識としては明確に泛緑陣営に立っている。
 入獄した陳水扁の支持者でもあるし、昨年12月に東京で講演した折には李登輝へのシンパシーを語っている。
 なお、この東京講演の時点ではまだ立候補の正式表明はしていないのだが、日本の選挙でよく見かける片目が空白のダルマを贈られている。

 他方で、泛藍陣営と泛緑陣営の対立構造がすでにマンネリ化して、政治的争点を効果的に汲み上げられなくなっていることに対して国民の不満も根強い。
 柯文哲は国民党だけでなく民進党も含め、既存政治すべてに対して歯に衣着せぬ発言をしているため、そこが一般の人々からは受けているらしい。

 2011年に台湾大学病院でエイズ感染者の臓器を誤って移植してしまう事件が起こったとき、柯文哲も監督責任を問われた。
 ところが、行政も含めたシステム全体の問題を一方的に押し付けられたことに対し彼は臆せず発言したため注目を浴びたという。
 いずれにせよ、既存の政治社会システムに対する不信感を彼が代弁しているとみなされているのだろう。

■最大野党・民進党も支援に

 こうした動向を民進党もかなり意識している。
 現在の党主席・蘇貞昌(スー・ジェンチャン)は独自候補擁立にこだわっていたが、かつて総統選挙に立候補した経験のある有力者、蔡英文(ツァイ・インウェン)や謝長廷(シエ・チャンティン)が柯文哲を支持する意向を表明し、蘇貞昌も「柯文哲現象」を無視できなくなっている。
 民進党は必ずしも一枚岩の政党ではなく、有力政治家同士の足の引っ張り合いも頻繁に見られるから、そうした党内パワー・バランスの影響があるのかもしれない。
 いずれにせよ、柯文哲に対して民進党への入党を条件に正式な候補者とするという話も出たが、無所属のまま民進党は支援するという方向で落ち着きそうだ。 

 台北市長は任期4年、再選は1度までしか認められていないため、現職の●龍斌(ハオ・ロンビン、●=赤におおざと)は出馬できない。
 国民党から出る対立候補としては連勝文(リエン・ションウェン)の名前が取り沙汰されている。
 連戦(リエン・ジャン)元副総統の息子というサラブレッドである。
 そう言えば、●龍斌も●柏村・元行政院長の息子という世襲政治家だ。
 「政治素人」柯文哲の存在がいっそう引き立つ。
 なお、2010年に連勝文が銃撃されて負傷するという事件が起こったが、その時に救急外科医として対応したのが柯文哲だったという因縁もある。

■柯文哲の勝算は?

 柯文哲に勝ち目はあるのだろうか?
 台北市長選挙の動向について考えてみるが、過去のデータや分析については小笠原欣幸(東京外国語大学、台湾政治)「2010年台北・新北市長選挙の考察―台湾北部二大都市の選挙政治」を参照させていただく。

 台湾の選挙では北部は国民党が強く、南部は民進党が強いという色分けがくっきりと出る。
 台北市に関しても、
(1).外省人及びその第二世代、第三世代の比率が高い。
(2).公務員・軍・教育関係者の比率が高い。
(3).1人当たりの平均所得が高い、
という特徴がある。
 こうしたことから、国民党は台北市で固い基礎票を持っており、民進党はもともと劣勢だと指摘される。

 1994年に陳水扁が当選できたのは、当時の李登輝総統に反発して国民党を離党した人々が結成した「新党」が独自候補者を擁立し、泛藍陣営が分裂していたからである。
 この時以外は国民党の候補(馬英九、●龍斌)が50%以上の得票で当選しており、陳水扁は二期目を阻まれ、民進党から出馬した謝長廷(2006年)や蘇貞昌(2010年)といった有力政治家も敗れている。

 上記の小笠原論文では藍緑両陣営の基礎票を捉える指標として台北市議員選挙の得票率について考察されている。
 1994年から2010年にかけての両陣営の得票率の推移を見ると、泛藍陣営は低下傾向(60.8→54.8%)にある一方、泛緑陣営は増加傾向(30.1→39.0%)にある。
 トレンドとして見ると、基礎票のレベルで両者の差は徐々に縮まりつつあるようだ。

 となれば、こうした基礎票を固めつつ、浮動票を取り込む戦術を効果的に実施することができれば、民進党系の候補者にも可能性がないわけでもない。
 その点、柯文哲の場合には「素人」という世論受けする持ち味が武器になる。

 いずれにせよ、台北市長選挙はまだまだ先のことで、情勢も色々と変化するだろう。
 柯文哲の勝敗はともかくとして、彼の得票率には藍緑両陣営に飽き足らぬ無党派層の投票行動が反映されることになるように思われる。
 そこから、台湾における政治社会の一定の変化を垣間見ることができるのかもしれない。

◆著者プロフィール:黒羽夏彦(くろは・なつひこ)
台湾専門ブログ「ふぉるもさん・ぷろむなあど」、書評ブログ「ものろぎや・そりてえる」を運営。1974年生まれ。出版社勤務を経て、2014年3月より台南の国立成功大学文学院華語中心へ留学予定。