2013年9月11日水曜日

台湾で決裂:馬英九総統と王金平議長、同じ国民党の「なぜ?」

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●日本のテレビドラマ「半沢直樹」の主人公の決めぜりふ「やられたら倍返しだ!」をそのまま引用して、激しい政争を伝える台湾の有力紙「自由時報」(12日付)


サーチナニュース  2013/09/11(水) 14:12
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0911&f=politics_0911_004.shtml

台湾で決裂…馬英九総統と王金平議長、同じ国民党の「なぜ?」

  台湾の馬英九総統と王金平立法院院長の決裂が決定的になった。
 馬総統は10日夜、検察への介入があったとして王院長の辞任を求める声明を発表した。
 王院長は検察の職権乱用を食い止めるためと反論している。
 台湾の立法院は日本で言えば国会、院長は国会議長に相当する。
 これまで「二人三脚」で選挙を勝ち抜いてきた2人だけに、今後の台湾政局に大きな影響を及ぼす可能性がある。
 中国新聞社などが報じた。

  王院長は1941年に高雄州岡山郡(現在の高雄市)で生まれた。
 1975年から立法院選挙で連続当選している。
 99年には立法院院長、2000年に国民党副主席に就任した。

  馬英九総統は父親が湖南省の出身だが、本人は1950年に香港で生まれた。
 米国留学経験があり、台北市市長を経て05年-07年、09年以降は国民党主席、また08年からは中華民国総統を務めている。

  台湾では事実上の二大政党制がほぼ定着している。
 馬総統の前任者は民進党の陳水扁総統だった。
 馬総統と王院長は国民党の政権奪回のために、二人三脚で多くの選挙を戦ってきた仲だ。

  「決裂問題」が急浮上したのは9月6日だった。
 最高法院(最高裁)検察署特別捜査チームが、王院長と民進党の議員団責任者を務める柯建銘議員の電話会話の監視記録を発表したことだった。
 王院長の発言に、柯議員に絡む裁判で、検察に対して「無罪判決が出た場合には上告しないよう」に告げたと説明する部分があったという。

  馬総統は「司法に介入した」と批判し、「立法院機構の責任者として不適切」、「国民党の尊厳を保つためにも辞任をしてもらいたい」などと述べた。
 王院長は「台湾の検察は職権を乱用して上告する」ことが問題と反論し、台湾の司法改革チームも毎年のように、検察の職権乱用による上告の事例を発表していると指摘した。

  さらに、「電話の監視」も正規の手続きを経ていないとして「職権乱用であり違憲だ」と批判し、辞任勧告には応じず、徹底的に“抗戦”する考えを示した。

  国民党上層部の「決裂」について、馬総統と王院長の間には以前から対立が深まっていたとの見方もある。
 王院長は民進党との対決では比較的柔軟で、立法院院長に就任したのも民進党からの信頼を得たことが大きな理由だった。
 ただし、議会運営では国民党が重視する法案が通らないことがしばしば発生していた。
 馬総統はいらだっており、“王院長切り”を図っていたとの見方がある。

  台湾の有権者の間で、王院長への「同情」が高まり、馬総統の支持が低下する可能性があるとの分析もある。

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◆解説◆

  第二次世界大戦で日本が敗戦したことにより、中華民国が台湾を統治することになった。
 蒋介石が率いる国民党が大陸で共産党に敗北したことにより、国民党政府は台湾に拠点を移した。
 大陸部からは大量の国民党員と支持者が台湾に逃れた。
 1995年の調査では、台湾の人口2100万人のうち、戦後になって台湾に移った、
 いわゆる「外省人」は124万人で、それ以前から台湾に住む「本省人」と「外省人」の間に生まれた人は358万人とされている。

  「本省人」は1645万人と圧倒的に多いが、「外省人」は国民党政府とともに台湾に来たとの経緯があり、今も台湾社会の上層部では、外省人の占める割合がかなり大きい。

  国民党は1945年に台湾に移って以来、「圧政」を敷いた。
 それ以前の台湾住民は「大いなる違和感と失望」を感じたという。
 台湾原住民パイツ・ヤタウヨガナさんは蒋介石の前に出た人がナチス式の敬礼をするので
 「なに、これ? 馬鹿みたい」
と感じたという(ドキュメンタリー映画『台湾アイデンティティー』より)。
 パイツ・ヤタウヨガナさんの父親は地域の指導者で、住民社会の向上のため尽力したが、国民党当局に「問題分子」とみなされ、銃殺された。

  国民党は共産党との内戦を進めるために、台湾を経済的に搾取した。
 そのために、人々の不満はなおさら高まった。
 47年2月28日には台北市内でヤミたばこを売っていた女性に、取締官が暴行を加えたことがきっかけで国民党政権に対する蜂起が発生。
 国民党側は軍を動員して徹底的に弾圧した。
 この2.28事件の犠牲者は2万8000人とされるが、今なお真相は分かっていない。

  2.28事件にともない台湾では戒厳令が出され、約40年にわたり「恐怖政治」が続いた
 台湾ではその後も、裁判を経ない逮捕や処刑が続いた。

  台湾では1970年になり、民主化運動が盛んになった。
 蒋介石の跡を継いだ蒋経国総統は民主化と開放政策に着手。
 87年には戒厳令を解除した。
 背景には、米中が関係を改善させていったので、
 「独裁体制を続けていたのでは、米国にとって、台湾を支援するイデオロギー面での理由が希薄。
 切り捨てられる可能性がある」
との危機感もあったとされる。

  次の李登輝総統はまず、台湾省、台北市、高雄市での首長選挙を実現させ、2期目となる1996年の総統選挙では民選選挙(直接選挙)を実施して当選した。
 2000年の総統選挙では民進党の陳水扁主席が当選した。

  1996年の総統選挙は中華系民族の安定した実質的国家において、初めての民選選挙による国家指導者の選出、2000年の選挙は初めての「平和裏に実施された選挙による政権交代」となった。

  台湾では選挙制度がほぼ定着したと言ってよい。
 しかし、司法については「関係者の思想などで結末が変わる」との見方もある。
 総統府機密費の不正流用などで実刑判決を受け服役中の陳水扁前総統は「不当な扱い」と主張しつづけている。

  民進党支持者の中にも
 「国民党の有力者だったら、あのように厳しい判決はなかった」
との声がある。
 台湾の司法については、まだ不信感も根強いと言わざるをえない。



=2013/09/16付 西日本新聞朝刊= 2013年09月17日(最終更新 2013年09月17日 01時18分)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/world/article/39995

総統VS立法院長、台湾政争加熱 馬氏、政敵から「倍返し」?

 台湾で、馬英九総統(63)と国会議長に当たる王金平立法院長(72)の激しい政争が続いている。
 馬総統は司法介入疑惑を理由に王氏の辞任を要求、与党国民党はその党籍を剥奪した。
 ところが裁判所はこの処分を当面認めないという決定を出したため王氏は失職を免れ、身分を維持することになった。
 馬総統は「司法権の独立」を旗印に一気に政敵追い落としにかかったが、皮肉にもその司法に「待った」をかけられた形。
 現地メディアは連日、次は王氏の「反撃」だと報じている。

 始まりは今月6日、最高検特別捜査チームの記者会見だった。
 発表されたのは王氏が、会計法違反などに問われた野党議員から相談を受け、検察側に上訴断念を働き掛けた、という疑惑。
 野党議員は6月に無罪判決を受け7月には検察が上訴せず判決が確定していた。

 会見当時、王氏は娘の結婚式のためマレーシアに滞在中。
 馬総統の動きは迅速だった。
 9月8日、総統府で記者会見すると「司法の独立を侵した」と厳しく批判。
 王氏は10日夜、台湾に戻り空港で緊急会見して疑惑を否認したが、馬総統が主席を務める国民党は翌11日「党の名誉を損なった」として党籍剥奪の処分を決定した。

 王氏は比例代表選出のため台湾では党籍を失うと自動失職する決まり。
 絶体絶命の窮地である。

 だがここで逆転劇が起きる。
 王氏は党の処分を受けるとすぐに党籍確認の民事訴訟(本裁判)とセットで党籍維持の仮処分を申し立てていた。
 13日、台北地方法院(地裁)がこの仮処分の申し立てを認める決定を出したのだ。
 これで党籍剥奪の是非を問う本裁判の判決が確定するまで、王氏は党員としての身分を維持することになった。

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 王氏は1999年から立法院を仕切ってきた与党の重鎮。
 台湾南部・高雄県(現高雄市)の農村出身で、代々台湾に暮らす「本省人」家庭に育ち、高校の数学教師を経て政界に転じた。
 温厚さと調整能力に定評があり「台湾独立」を志向する最大野党民主進歩党とのパイプも太い。
 香港から戦後台湾へ渡ってきた「外省人」の子孫で親中国色が強い馬総統とは肌合いが異なる。

 2人は2005年の党主席選挙で激しく争った間柄で、馬総統は野党との協調を重んじる王氏の立法院運営にも不満を募らせていたとされる。

     ■

 王氏の主張を認めた仮処分決定について、国民党は週明けに抗告する見通し。
 だが仮にこのまま本裁判にもつれこめば判決確定には通常数年かかる。
 王氏は当分の間、立法院長のままでいることが可能になる。
 その王氏は老練な政治家らしく、馬総統を直接批判することは慎重に避けている。

 一方王氏を「立法院長として不適」と断罪してしまった馬総統は“自縄自縛”の窮地に陥った。
 司法権の侵害を理由に王氏を追い詰めた以上、裁判所の決定が意に沿わないからといって強引な手法はもはや取りづらい。

 世論の後押しもない。
 王氏が海外滞在中に疑惑が公表された経緯や、馬総統が国民党の処分決定前に「党籍剥奪」を口にした姿勢も嫌気されている。
 地元民放の世論調査では馬総統の支持率は08年の就任以来最低の11%に低下。
 与党内部からも批判の声が上がっている。 

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●立法院は混乱

 中央研究院政治学研究所の徐火炎研究員(政治心理学) 馬総統は「司法権の独立」を守る清廉なイメージを強調し、同時に党内派閥問題を解決したかったのだろうが、やり方がまずかった。
 本来は疑惑の内容を司法機関が詳しく調べるべきで、王氏が海外にいる間に動いたことも問題だ。
 王氏の地盤の台湾中南部で国民党の勢力はそがれ、17日に再開する立法院は混乱が続くだろう。



レコードチャイナ 配信日時:2013年9月23日 23時16分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=77082&type=0

中国共産党が、台湾国民党の党内対立激化を懸念=「民進党が漁夫の利、政権奪回も」と―英誌

 2013年9月22日、環球網は記事
 「英メディア:中国共産党の懸念、国民党の分裂と漁夫の利を得た民進党の政権奪回」
を掲載した。

 英誌・エコノミストが台湾政局をとりあげた。
 台湾与党・国民党の党内対立が深まっている。馬英九(マー・インジウ)総統は司法に圧力をかけたとされる王金平(ワン・ジンピン)立法院院長の党籍剥奪を提起したが、裁判所が差し止め命令を出し膠着状態に陥っている。

 この状態に懸念を強めているのが中国共産党だ。
 国民党の党内対立が続けば、陳水扁(チェン・シュイピエン)氏が勝利した2000年の総統選の二の舞となり、民進党の政権奪回につながりかねないからだ。
 また、中台の貿易協定も今後は国民党の立法院勢力が反対する可能性も考えられる。
 悲願である政治協議の実現もより困難となった。



サーチナニュース 2013/09/24(火) 17:20
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0924&f=politics_0924_003.shtml

国民党を除籍された大物政治家、法廷闘争を本格化=台湾

  台湾の王金平立法院院長が、国民党よる除籍処分について、同処分をめぐる裁判の決着がつくまで党員としての権利を維持する「仮処分」を台湾高等法院(裁判所)に求めた。
 台湾高等法院は補償金として王院長が国民党に対して保証金938万台湾ドル(約3140万円)を支払うことを条件に、王院長の求めを認めた。
 中国新聞社などが報じた。立法院は日本の国会、院長は議長に相当する。

  王院長は民進党の議員団責任者を務める柯建銘議員に絡む裁判で「司法に干渉した」とされる。
 王院長はこれまで、馬英九総統と“二人三脚”のようにして、民進党から政権を奪還し、さらにさまざまな選挙を戦ってきた仲だったが、「司法への干渉」問題が表面化してから馬総統は王院長について、「立法院機構の責任者として不適切」、「国民党の尊厳を保つためにも辞任を」などと厳しく非難するなどで、両者の仲は決裂した。

  一方の王院長は「台湾の検察は職権を乱用して上告する」ことが問題と反論し、台湾の司法改革チームも毎年のように、検察の職権乱用による上告の事例を発表していると指摘。

  問題が発覚したのは最高検察署特別調査チームの6日の発表だった。
 同チームは「王院長と民進党の議員団責任者を務める柯建銘議員の電話会話の監視記録」で問題の存在を知ったと説明。
 同署の法務部門の責任者である曾勇夫氏と、陳煌署長が王院長の求めに応じて、検察官の林秀濤氏に「柯建銘議員に無罪判決が出た場合、上告しないよう」求めたという。

  王院長は”電話の監視”について「電話の監視」も正規の手続きを経ていないとして「職権乱用であり違憲だ」と批判した。

  国民党は11日、「紀律検討会」を開催して王院長の党籍剥奪を決定。
 王院長は日本の「比例代表」と似た「選挙区なし」の議員であり、国民党の党員でなくなると議員、さらに議長の地位は自動的に失う。

  このため、王院長は国民党の除籍処分を無効とするよう裁判に訴えた。
 国民党も王院長を逆告訴するなどで、法廷闘争は複雑化しつつある。

  台湾高等法院が、
 「裁判が終わるまで、党員としての諸権利を保つ
ことを認める仮処分を決めたため、王院長は当面、地位を確保できることになった。
 王院長の任期は2016年までだが、台湾の裁判は三審制であり、王院長の「党籍問題」に決着がつくまで、長ければ5年程度がかかるとの見方がある。

  そのため、本来ならば自党員である議長との意思疎通が困難になった国民党は国会運営でも苦労する可能性が高まってきた。

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◆解説◆

  同問題により、台湾では馬英九総統への批判が高まった。
 メディアも「外にも中にも友達いない馬英九」などと表現するようになった
 。馬英九総統に国民党外からの批判が多いことは不思議でないとしても、最も親しかった“同志”とまでも決裂し、党内でも孤立しているとの揶揄(やゆ)だ。

  一方、陳水扁前政権についてはあらゆる方面で非難を続けた中国大陸側だが、馬総統に対する批判めいた報道などは、今のところ見られない。
 「外にも中にも友達いない馬英九」に加えて「仲がよいのは共産党」とでも言えそうな、異常な事態だ。

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  馬英九総統と王金平院長の対立では、外省人と本省人の感情面の距離を指摘できるかもしれない。
 王院長は1941年に高雄州岡山郡(現在の高雄市)で生まれた。
 馬英九総統は父親が湖南省の出身だが、本人は1950年に香港で生まれた。

  台湾では1945年の日本の敗戦にともなう中華民国への引き渡し以前からの住民を「本省人」、国民党とともに台湾に移った人を「外省人」と呼ぶ。
 台湾の人口約2100万人のうち、本省人は1645万人、外省人は124万人、本省人と外省人の血が混ざる人は358万人だ。

  国民党政権、つまり外省人にはかつて、本省人を大弾圧した過去がある。
 1947年2月28日に発生した2.28事件だけでも、少なくとも2万8000人が犠牲になった。

  また、国民党政権の腐敗はひどく、本省人は「犬が去ったら豚が来た」とののしった。
 「日本は犬だった。
 やかましく吠えてかみつきもした。
 ただ、台湾を守り、いつくしむ気持ちはあった。
 外省人は豚だ。むさぼるだけむさぼろうとする
との意だ。

  本省人と外省人のデリケートな関係は現在も残り、よく知らない人に「あなたはどちらですか?」とは聞きづらい雰囲気もあるという。
 また気質面でも「本省人は平均的にウエットな人が多い。
 外省人はドライ」との見方がある。



jiji.com  2013/10/05-20:46
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2013100500312

立法院長の失職回避=国民党、抗告断念-台湾

 【台北時事】台湾の与党・国民党は5日、高等法院(高裁)が先月30日に認めた王金平立法院長(国会議長)の党籍保全に関する仮処分に対し、最高法院(最高裁)に抗告しない方針を決めた。
 これに伴い、王氏は立法院長の失職を免れる見通しとなった。
 野党立法委員(国会議員)の訴訟をめぐる司法介入疑惑で党籍を剥奪された王氏は、台北地方法院(地裁)に党籍保全の仮処分を申請。
 地裁、高裁はいずれも仮処分を認めた。



【日中の狭間にあって:台湾はどう動くか】



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