2013年10月31日木曜日

台湾防衛の最大課題は潜水艦戦力増強:切り札は日本の潜水艦技術

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●31日、米国から購入したP3C対潜哨戒機の公開式典で演説する台湾の馬英九総統=屏東空軍基地(AFP=時事)


jiji.cvopm 2013/10/31-19:28
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2013103101011

P3C哨戒機を公開=15年までに12機配備へ-台湾

 【台北時事】台湾国防部(国防省)は31日、米国から購入し、9月に南部の屏東空軍基地に配備されたP3C対潜哨戒機を同基地で内外メディアに公開した。
 米国は2007年、台湾に対してP3C12機を19億6000万米ドル(約1921億円)で売却する方針を決定。9月25日に1機目が引き渡された。年内にさらに3機が台湾に到着し、15年中に配備が完了する見込み。(2013/10/31-19:28)



JB Press 2013.10.31(木)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39037

切り札は日本の潜水艦技術、
中国の覇権主義を封じ込める妙手とは

 国家財政危機が継続しているアメリカでは、国防予算の大幅減額に伴う具体的戦力低下がますます深刻化しつつある。

 オバマ政権がアジア重視政策を打ち出しているのに対応して、かつ中国海軍の急速な増強を睨んで、アメリカ海軍は太平洋艦隊を強化する方針を打ち出している。
 とは言っても、イランやシリア、そしていまだに不安定な北アフリカ情勢を考慮すると、大西洋・地中海方面のアメリカ海軍力を大幅に減らして太平洋方面に差し向けられる状況とは言えない。

 オバマ政権下における国防費減額の流れに加えて、強制財政削減措置によって海軍予算も含めて国防予算全体が一律に削減されている中で「アジア重視政策を後押しするために太平洋方面の海軍力を増強する」というのは、「他の地域における弱体化よりも弱体化の度合いを極小に抑える」という意味合いと理解するべきである。

 したがって、名実ともに海軍力(航空戦力を含む)や長射程ミサイル戦力を強化し続けている中国軍と比較すると、東アジア(日本周辺から南シナ海にかけて)方面におけるアメリカ海軍力は相対的に弱体化の道をたどっていると言わざるをえない。
 アメリカ財政が奇跡的に健全化しない限り、この傾向はますます強まることは避けられない。

 日本やフィリピンの国防がアメリカ国防予算大幅削減の影響を受ける状況は本コラムでもしばしば指摘しているが、
 日本やフィリピン以上に深刻な打撃を被る可能性が高いのが、台湾の国防である。

 台湾は自主防衛努力を精一杯推し進めているが、日本を本拠地にしているアメリカ海軍や海兵隊の存在は、台湾防衛の左右を決する最大の要素の1つとなっている。
 つまり、アメリカ海軍力の弱体化は、台湾国防能力を直撃するのである。

■念願のP-3C配備実現も米海軍力弱体化の結果

 すでにブッシュ政権の時期にアメリカ政府が約束していた対台湾武器供与のいくつかのパッケージのうち、台湾国防当局が待ち望んでいた(そして中国国防当局が強く反発していた)対潜哨戒機P-3Cの第1陣12機の配備が、ようやく2013年9月末に達成された。
 これまで旧式の対潜哨戒機しか保有していなかった台湾軍にP-3Cが12機加わり(2015年までにはさらに第2陣が加わる予定)中国海軍潜水艦に対抗する能力が飛躍的に強化された。

 ただし、穿った見方をするならば、アメリカがようやく台湾にP-3Cの売却を実施したのは以下のような理由とも考えられる。

 予想以上のスピードで強力になってしまっている中国海軍通常動力潜水艦戦力を封じ込めるためには、アメリカ海軍自前の対潜能力(そして海上自衛隊の対潜能力)を増強する必要がある。
 しかし、国防予算削減のまっただ中でそのような予算を捻出することができない。
 そこで、台湾軍にアメリカ海軍(ならびに海上自衛隊)と共通のP-3Cを運用させることにより、第7艦隊をはじめとして東アジア海域で作戦するアメリカ海軍艦艇にとって手強い敵である中国海軍潜水艦部隊を封じ込める一助にしよう、というのである。

 要するに、かつて冷戦中には第7艦隊にとって最大の脅威であったソ連海軍潜水艦部隊や長距離爆撃機を封じ込めるために、アメリカ海軍自身が莫大な予算を投入する代わりに、日本に強力な対潜哨戒能力(海上自衛隊はおよそ100機のP-3Cを保有していた)を持たせたりイージス駆逐艦を建造させたりしたのと似通った手法ということができる。

■潜水艦戦力増強が台湾防衛最大の課題

 アメリカ側の真の動機はともかくも、台湾国防当局にとってP-3Cの配備が開始されたことは極めて心強いステップであることは間違いない。
 しかし、台湾政府ならびに台湾軍がP-3C以上に調達したいのが、現在台湾空軍が保有するF-16A/B以上に強力な新鋭戦闘機と、ある程度まとまった数の新型潜水艦である。

 特に、中国海軍の強力な潜水艦戦力(攻撃原子力潜水艦と通常動力潜水艦)と比べると、
 台湾海軍は惨めなほど弱体な潜水艦戦力(2隻の老朽グッピー2型潜水艦と2隻の旧式海龍型潜水艦)しか保持していない。
 そこで、P-3Cの配備に関連して、台湾軍高官はブッシュ政権下で約束した8隻の新型通常動力潜水艦の台湾海軍に対する供与の実現を強く求めた。

■各国の潜水艦戦力の比較

 中国海軍通常動力潜水艦の主たる任務は、アメリカ海軍(場合によっては海上自衛隊)艦艇に対する接近阻止である。
 したがって、アメリカが対中国潜水艦戦力を飛躍的に増強することなどはどう見ても不可能な状況下で、台湾海軍の潜水艦戦力が増強されることは、中国海軍にとってはP-3Cの配備と相まって極めて不快な動きとなり、アメリカ海軍にとっては喜ばしい出来事となる。

 このようなタイミングを捉えて、先日(10月25日)馬英九総統は、アメリカのメディアのインタビューに答えて、
 「中国の軍事的脅威から台湾を守り抜くためにはアメリカからの各種兵器の調達が必要不可欠であり、とりわけ潜水艦の供与の実現は喫緊の課題である
と明言した。


●各国の潜水艦戦力の比較

■誰が台湾海軍の潜水艦を建造するのか?

 台湾自身も、いつまでもアメリカから新型潜水艦を供与されるのを待ってはいられないため、独自開発を試みてはいる。
 そして台湾企業によって潜水艦用鋼材の開発が成功し、台湾独自設計の潜水艦や、ノルウェイのウラ型潜水艦をベースにしたもの、それにアルゼンチンのサンタ・クルズ型潜水艦(ドイツ製造)をベースにしたものなどの建造計画が進められている。

 しかし、推進システム・各種コントロールシステム・各種兵器システム等々、独自開発のハードルは極めて高い。
 したがって、現在のところ、アメリカが約束した8隻の潜水艦供与の実行に期待するしかない状況である。

 ただし、アメリカ政府が台湾海軍に8隻の通常動力潜水艦を供与するという約束を実行しようとしても、極めて大きな壁が立ちはだかっている。

 過去半世紀近くにわたって原子力潜水艦だけを建造してきた
 アメリカには、通常動力潜水艦を建造するメーカーが存在しない。
 したがって、アメリカがアメリカ以外の国の通常動力潜水艦を調達してそれを台湾に供与しなければならない。
 いくらアメリカ政府が台湾への通常動力潜水艦供与を決断しても、潜水艦を建造するメーカーの政府がゴーサインを出さない限り、実現しない仕組みになっているのである。

 もちろん、中国共産党政府は、世界各国の潜水艦メーカーや政府に
 「台湾への売却には強烈に反対する」
との圧力をかけ続けている。


●台湾海軍潜水艦「海龍」(写真:台湾海軍)

 1980年代に、オランダの造船所によって設計・建造された通常動力潜水艦2隻(現在も台湾海軍が使用している海龍型)が台湾海軍に配属(1987年と1988年にそれぞれ就役した)された。
 台湾海軍は、当初6隻購入する予定であったが、中国共産党政府によるオランダ政府や関連企業に対する強烈な圧力により、取引は2隻で終了してしまった。

 現在、中国の経済的・外交的そして軍事的地位は、この取引を中止させた当時とは比較にならないほど向上している。
 そのような状況において、中国共産党政府の強烈な圧力に直面しているオランダやドイツ、それにノルウェイならびにスウェーデンの潜水艦メーカーやそれぞれの政府が、アメリカ経由とはいえ台湾への潜水艦供与計画に協力することはとても考えられない。

■潜水艦技術大国日本の出番

 台湾海軍そして台湾国防当局にとって唯一の(ただし極めて微かな)希望は日本の潜水艦建造技術である。

 以下は、筆者がアメリカ海軍関係者、アメリカ防衛産業技術者、それに台湾海軍関係者たちと私的にではあるが幾度か議論した際に浮上したアイデアである。

 海上自衛隊の現行潜水艦のうち新鋭の「そうりゅう」型潜水艦は、スウェーデンのコックムス社製スターリング機関を採用しているものの、通常動力潜水艦としては世界の海軍の潜水艦の中でも最高水準の潜水艦と評価されている。
 これは中国海軍を含め世界中の海軍が認めているところである。

 そして、国内に2つの潜水艦建造メーカーが存在する国は日本(三菱重工と川崎重工)とアメリカ(ノースロップ・グラマンとゼネラル・ダイナミクス)だけである。

 上記のように、アメリカの2社は原子力潜水艦メーカーであって現状では通常動力潜水艦は建造できない。
 したがって、質も量もともに、日本は世界最大の通常動力潜水艦建造国なのである。

 このような世界に冠たる潜水艦大国である日本が、東アジア諸国共通の“公敵”である中国の覇権主義的海洋侵攻戦略を封じ込めるのに一肌脱がないと、それこそ憲法9条を隠れ蓑にアメリカ軍事力に頼りきり自主防衛努力を放棄した“卑怯者国家”とのレッテルが国際社会に定着してしまいかねない。


●海上自衛隊潜水艦「もちしお」(写真:米海軍)

 もちろん、米海軍関係者や台湾海軍関係者たちも、いくら安倍政権が防衛力の強化を含んで「強い日本」を標ぼうしているからといっても、
 三菱重工や川崎重工が直接台湾海軍向け潜水艦を建造して(書類上はアメリカ経由で)台湾海軍に売却することを日本政府が後押しするほどに「腹を据えて中国共産党政府の覇権主義と対決」することまでは期待していない。

 そこで、アメリカ海軍やアメリカ防衛産業関係者たちは、日本の潜水艦メーカーにアメリカ法人を設立させるか、それらメーカーから優秀な人材をアメリカメーカーが引き抜いてしまい、アメリカの新潜水艦メーカーによって台湾向け通常動力潜水艦を建造するというアイデアを打ち出している。

 もちろん、そのような頭脳流出が起きるよりは、日本政府の大英断によって日本・アメリカ・台湾の実質的三国海軍同盟をスタートさせるべく、日本のメーカーによって(もちろん「そうりゅう」ほどの新鋭艦である必要はないのだが)しかるべき能力を有した潜水艦を台湾海軍のために建造することを容認すべきであろう。

 我々は、台湾の国防強化は、日本の国防強化と直結することを忘れてはならない。

北村 淳 Jun Kitamura
戦争平和社会学者。東京生まれ。東京学芸大学教育学部卒業。警視庁公安部勤務後、平成元年に北米に渡る。ハワイ大学ならびにブリティッシュ・コロンビア大学で助手・講師等を務め、戦争発生メカニズムの研究によってブリティッシュ・コロンビア大学でPh.D.(政治社会学博士)取得。専攻は戦争&平和社会学・海軍戦略論。米シンクタンクで海軍アドバイザー等を務める。現在サン・ディエゴ在住。著書に『アメリカ海兵隊のドクトリン』(芙蓉書房)、『米軍の見た自衛隊の実力』(宝島社)、『写真で見るトモダチ作戦』(並木書房)、『海兵隊とオスプレイ』(並木書房)、『尖閣を守れない自衛隊』(宝島社)等がある。




【日中の狭間にあって:台湾はどう動くか】



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2013年10月30日水曜日

馬英九を悩ます「現状維持」の足かせ:台湾住民は中国との一体化を望まない

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JB Press 2013.10.30(水)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39022

馬英九総統を悩ます「現状維持」の足かせ台湾の住民は中国との一体化を望まない

 9月末に台北で政府系シンクタンクとシンポジウムを行い、10月半ばには東京で馬英九政権に近い人物と懇談する機会があった。

 現在2期目の馬英九政権は、事実上任期最終年となる2015年が次期総統選挙のため、思い切った活動ができない。
 だとすれば、総統として存分に活動できる期間は残り1年強だけである。
 その間における馬英九政権の対中政策はどのようなものになるのか。

 経済関係の深化は進めたが政治関係は後回しにしてきた中国との関係に、何らかの突破口を開くことができるのか。
 その場合の内外の反応はどうなのか。

 今回は、台湾の現状について感じるところを述べることにしたい。

■中台関係の改善が日台関係に与えた影響

 まず確認しておきたいのは、2008年に馬英九政権が台湾に成立して以来、急速に中国との関係改善を進めてきたことだ。
 「三通」(通商、通航、通郵)が2008年末には実現し、中台の自由貿易協定に相当する「ECFA」(経済協力枠組み協定)も2010年9月に発効した。

 結果として台湾における中国人のプレゼンスは極めて大きなものになった。
 2012年には200万人を超える中国からの観光客が台湾を訪れ、彼らを運ぶ中台の直行便は週616便にまで増えた。
 台湾の観光地はどこも中国人観光客が幅を利かせている現実がある。

 こうした台湾海峡両岸の関係改善が、
 実は日本の台湾政策における自由度を高める結果となったことは強調しておきたい。

 中台関係が緊張していた国民党の李登輝総統の時代、その後を受けた民進党の陳水扁総統の時代においては、
 「中国は1つであり、台湾は中国の不可分の領土である」
とする中国の強烈な反発を恐れて、日本政府は台湾との関係を「敬して遠ざけていた」と言っても過言ではない。
 しかし、事実上「1つの中国」を受け入れる「92年コンセンサス」を対中政策の基本とした馬英九政権が中台の関係改善に踏み込んだことによって、日本政府は中国への配慮を軽減することが可能になったのである。

 その実例として、例えば2011年9月の日台投資保護協定の締結がある。
 また、日本に長期滞在する台湾人の日本における在留カードの国籍記載が、従来は「中国」であったところ、2012年7月から「台湾」に変更されたことが挙げられるだろう。
 来年には東京の国立博物館と九州国立博物館で「台北・故宮博物院展」の開催も予定されている。
 中台関係が厳しいままであったなら、こうした実績は作りようもなかっただろう。

 さらに言えば、このような日台関係の進展は日中関係の影響を受けずに済んだという事実も指摘しておくべきだろう。
 尖閣諸島問題で日中関係がいかに緊張しようとも、日台関係が大きく揺らぐことはなかった。

 ただし、台湾も尖閣諸島の領有を主張してきた経緯があり、馬英九総統本人も、米国留学時代に尖閣諸島の領有をめぐって学位論文を書いたという実績もある。
 とはいえ、台湾がこだわったのは台湾漁民が伝統的に漁を営んできた尖閣諸島海域における漁業権であったことは明らかで、2013年4月に日台漁業協定が締結され、同海域における漁業権が確保されたことによって、台湾における尖閣諸島問題は現在沈静化している。

 この問題で「あてが外れた」のが中国だ。
 中国は尖閣諸島問題で台湾との「共闘」を目論んでいたが、馬英九総統はこれを拒否した。
 中国に台湾の立場を政治利用されるのを嫌ったことは明らかだ。

■中台の関係改善で米中の軍事交流が軌道に

 中台の関係改善による恩恵を蒙ったのは日本ばかりではない。
 米国も当てはまる。
 というのも、台湾は米中にとって「喉に刺さった魚の骨」のような存在で、常に米中の関係を阻害する要因であったからだ。

 米国が台湾の求めに応じ、防衛用の兵器売却を決めるたびに、米中の軍事交流は中国側によって停止されてきた。
 中台の関係が改善されたことによって、中国の台湾侵攻の切迫性が薄まり、結果として台湾への武器売却はオバマ政権になって以降、低調になっている。

 具体的に言えば、台湾がブッシュ前政権時代から米国に要求してきたF-16C/D型戦闘機66機の新規供与は現在も塩漬けにされたままである。
 オバマ政権は2012年9月、台湾が1990年代から運用してきた旧型のF-16A/B型145機のレトロフィット、つまりレーダーなどの装備を新型に更新する「能力向上」を認めることでお茶を濁したにすぎない。

 その甲斐あって、米中の軍事交流は軌道に乗り、8月には中国の常万全国防部長が訪米したほか、人民解放軍制服組の米国実務訪問も頻繁に行われるようになった。
 2014年夏には、ハワイ沖で行われる環太平洋合同演習(RIMPAC)に中国海軍が参加することも決まった。

 もちろん、だからといって米台関係が冷え込んでいるわけではない。
 2012年11月には台湾は米国入国の際のビザ免除の措置を付与されている。
 2013年3月には米国との間で「台米貿易・投資枠組み協定」(TIFA)の協議を再開し、8月には中南米を歴訪する途上、馬英九総統がニューヨークを訪問。ブルームバーグ市長や米議会関係者と接触したほか、在米華僑の歓迎会に出席するなど、いわゆる「トランジット外交」を展開し、台湾の存在をアピールしている。

■中国と経済一体化するも景気下降から脱却できず

 馬英九総統は「和中・親米・友日」という、いわば「全方位協調外交」を標榜してきた。
 今のところ、この路線は成功しているように見える。
 しかし、本当にこのままうまくいくかは疑問だ。
 「和中」を突き詰めていけば、経済関係にとどまらず政治関係に踏み込んでいかざるをえない。

 実は経済関係についても、馬英九政権の目論見通りに事態が展開しているわけではない。
 中国の経済成長を台湾に取り込むことができていないのだ。

 台湾経済の指標を見ると、
 台湾の海外投資の「60%以上」が中国向けである。
 貿易総額で見ても「28%」が中国・香港で、中台の経済的一体化は紛れもなく進展している。
 しかし、台湾経済はリーマン・ショック後の景気下降から脱却できず、低成長に喘ぎ、失業率は高止まっている。

 台湾の有力紙「聯合報」が2013年5月に行った調査では、台湾住民の76%が馬英九総統の経済運営に不満を持っているという結果が出ている。
 9月に入って、馬英九総統の支持率は、王金平立法院長(国会議長に相当)との「司法介入」による罷免騒動もあって、9.2%という記録的な低さを記録した。

 急速に求心力を低下させている馬英九総統に対し、中国の「政治協議」圧力も高まっている。
 10月6日、APECの会議で台湾の蕭万長・前副主席と顔を合わせた習近平主席は、中台の政治問題を「次の世代に先送りすべきではない」とクギを刺した。
 また、同月11日に上海で開催された「両岸平和フォーラム」に出席した張志軍・国務院台湾事務弁公室主任は、
 政治的対立を一時的に棚上げすることはできても、長期にわたって完全に回避することはできない」
 「経済だけで政治を扱わないというやり方は続かない」
と述べ、台湾に圧力をかけたのである。

■台湾住民は「現状維持」を望んでいる

 しかし、馬英九総統に、中国との政治協議に踏み込む余裕はないはずだ。
 台湾住民はことのほか中国との「統一」に結びつく政治協議には敏感に反応する。

 2011年、再選をかけた馬英九総統は10月17日の記者会見で、条件を付けつつも中国との平和協定締結の可能性に言及した。
 その直後から支持率が低下し始め、動揺した馬総統はすぐに
 「平和協定締結時には、その可否を住民投票にかける」
と弁明した経緯がある。

 「統一」「独立」「現状維持」を問う世論調査で台湾の民意を見ても、常に「現状維持」を支持する声が半数を超えている。

 住民のアイデンティティを問う世論調査でも、
★.「私は台湾人だ」という回答が昨年の段階で54%と半数を超えているのに対し、
★.「私は中国人だ」という回答はわずか3.6%にすぎない。
かつては半数近かった
★.「台湾人でもあり中国人でもある」という回答は漸減し、38%に下がっている。

 経済が一体化する一方で、
 台湾住民の心は中国から遠ざかりつつある現実がある。
 台湾の「現状」を大きく変えることにつながる中国との政治協議を、台湾住民が支持する状況にはない。

 それにもかかわらず、馬英九総統の認識はまだ甘いのだろう。
 今年10月10日の建国を記念する双十節で演説し、
 「海峡両岸の人々は同じ中華民族に属する。両岸関係は国際関係ではない」
と述べた。
 「国際関係ではない」という部分について批判を受けた後の釈明で、
 「中国と台湾との間に存在するのは特殊な関係であり、国際(international)でも国内(domestic)」でもない
と言い繕った。

 この問題は国会に相当する立法院でも取り上げられ、民進党の蕭美琴立法委員が国防部長の厳明に、
 「総統は両岸関係を“国際関係ではない”と表現したが、あなたならどう表現するか
と問いかけた。
 厳明部長はこれに対し、
 「敵対関係のままである
と明快に答えた。
 政権内部でも対中国政策ではまとまっているわけではないことが露呈した印象だ。

 台湾が中国の圧力に屈し、政治協議に応ずれば、中国が高い優先順位で提起してくる問題は、米国からの武器購入の停止であろう。
 台湾がこれを受け入れた途端、米国の「台湾関係法」はただの「紙切れ」になり、台湾の安全保障は中国に委ねられることになる。
 同時に、台湾住民が支持する「現状維持」は不可能になる。

 一見うまくいっているように見える「和中・親米・友日」という政策は、
 「台湾が政治的にも経済的にも、さらに安全保障的にも事実上独立しているという現状」
を維持していることが前提となる。
 そのことを馬英九政権は再確認する必要があるだろう。

阿部 純一 Junichi Abe
霞山会 理事、研究主幹。1952年埼玉県生まれ。上智大学外国語学部卒、同大学院国際関係論専攻博士前期課程修了。シカゴ大学、北京大学留学を経て、2012年4月から現職。専門は中国軍事・外交、東アジア安全保障。著書に『中国軍の本当の実力』(ビジネス社)『中国と東アジアの安全保障』(明徳出版)など。




【日中の狭間にあって:台湾はどう動くか】



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2013年10月27日日曜日

「尖閣諸島は中華民国の固有の領土」=台湾報道官が発言

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24日、環球網によると、台湾外交部の高安報道官は23日、「釣魚台(日本名・尖閣諸島)および周辺海域は中華民国の固有の領土である」と述べた。資料写真。

レコードチャイナ 配信日時:2013年10月24日 19時23分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=78275&type=0

「尖閣諸島は中華民国の固有の領土」=台湾報道官が発言―中国メディア

 2013年10月24日、環球網によると、台湾外交部の高安(ガオ・アン)報道官は23日、
 「釣魚台(日本名・尖閣諸島)および周辺海域は中華民国の固有の領土である
と述べた。

 日本の外務省は、尖閣諸島と竹島が日本固有の領土であると宣伝するために、インターネット上で国際法上の根拠を説明する動画を配信している。
 これについて、台湾外交部の高報道官は
 「歴史、地理、地質、国際法規などの点からみても、釣魚台および周辺海域は中華民国の固有の領土であることに疑いの余地はない」
と述べた。

 高報道官は、
 「馬英九(マー・インジウ)総統は東シナ海平和イニシアチブを提唱しており、平和的な方法で問題を解決すべき」
とし、関係各国に共同で当該地域の平和的安定を守ることを呼びかけた。


 中国が自国領だとするとき、尖閣諸島は台湾県に所属する諸島になる。
 よってもし、台湾が中国から独立する時、台湾が自国領だとすると、その時点で尖閣諸島は中国の領土ではなくなる。
 そこでこの中華民国の領土というのはなかなか問題を含んでいるものになる。


サーチナニュース 2013/10/31(木) 07:25 
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=1031&f=national_1031_002.shtml

【中国BBS】わが国が尖閣問題で武力を行使しない理由は何だ

  尖閣諸島(中国名:釣魚島)をめぐる日中の主張は平行線をたどり、日中関係も冷え込んだまま改善の糸口すら見いだせていない。
 中国のインターネット上では武力による島奪取を主張するユーザーも少なくないが、
 なぜ中国は武力行使しないのだろうか。

  中国大手検索サイト百度の尖閣諸島問題を話し合う掲示板に
 「中国が武力行使しないのは台湾が理由だ
と主張するスレッドが立てられ、中国人ネットユーザーが議論を交わした。

  スレ主は、
 「釣魚島が中国領土であることは間違いないものの、現実には台湾の管轄範囲だ」
と主張。
 台湾と統一するか協力をしない限り、武力行使は難しく、この状況で戦争することは米国が喜ぶだけだとも述べている。
 したがって「日本が先に手を出すのが一番」と主張した。

  ほかのユーザーからも「道理にかなった主張だ」と同意する意見や「台湾を手に入れられれば、東シナ海は安定し、南シナ海も握れる」というコメントが寄せられた。

  事実、中国政府は“尖閣諸島は台湾に属し、台湾も中国領土であるため、尖閣諸島は中国領”と主張している。
 また、台湾は中国とは別の“独立国家”と主張し、尖閣諸島についても“台湾領”と主張している。

  台湾を併合することは中国にとっての悲願だろうが、中国が実際の武力行使に出ることはありえないとの意見も少なくなく、
 「政府に期待しないほうが良いぜ。抗議と非難のほかに何ができるというんだ?」
などのコメントがあった。

  米国は尖閣諸島は日米安保の適用範囲であるとの見解を示している。
 スレ主は中国が武力行使に出ない理由を“台湾”に見出したようだが単純に武力行使すれば米国まで敵に回すことになるため、行使できないというのが真相だろう。





【日中の狭間にあって:台湾はどう動くか】



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2013年10月20日日曜日

「中国大陸は今でもわれわれの領土」:台湾・馬総統「一つの中国」を強調

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●10日、台湾の馬英九総統は、双十節(「中華民国」建国記念日)の式典において、中国大陸との関係について「国際関係ではない」と表明した。写真は中国国民党中央委員会。


レコードチャイナ 配信日時:2013年10月20日 13時50分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=78100&type=0

「中国大陸は今でもわれわれの領土」、台湾・馬総統「一つの中国」を強調―中国メデイア

 2013年10月10日、台湾の馬英九(マー・インジウ)総統は、双十節(「中華民国」建国記念日)の式典において、中国大陸との関係について「国際関係ではない」と表明した。
 台湾関係専門の中国ニュースサイト・台海網が18日付で伝えた。

 また馬総統は17日、「中華民国憲法によれば中国大陸は今でもわれわれの領土であり、よって、大陸との関係は国際関係などではありえず、一種の特殊な関係である」と述べた。
 さらに馬総統は現在の両岸(中台)関係について、過去60年の歴史上最も安定して平和的な段階であるとの認識を明らかにした。


 台湾国民党がいまだに大陸に未練をもっているということはすごいことだ。
 共産党は尖閣問題の失敗でデモ一つ開けない状態になり、新聞記者にマルクス学習をさせたり、インターネット監視要員を増やしたり、反当局的な大学ならびにその先生などに圧力を加えたり、いろいろやって思想的な締め付けを強化している。
 ということは、共産党の足元が相当にふらついているということなのであろう。
 ではもし、その共産党が傾いたらどうなる。
 誰が次の中国の覇者になる。
 まず、共産党から独立した解放軍ということになる。
 共産党がおかしくなったら途端、解放軍は共産党からの分離独立を宣言するだろう。
 もしそうしたら共産党は完全に崩壊に追い込まれ息の音が止まる。
 おそらくこの線が一番可能性が高い。
 しかし、軍に政治能力はない。
 小さな国ならいいが、大陸中国ともなるととても軍隊式の政治では収まりにくい。
 とすると、解放軍は共産党に代わって台湾の政治家連中を引っ張ってくるという選択肢が出てくる。
 となれば、「中華人民共和国」は「中華民主共和国」に衣替えする。
 そして、解放軍は「中華民主共和国軍隊」になる。
 「解放軍」とは共産党の党軍の名称だからこれは使えない。
 つまり共産党の私軍(党軍)から中国国家正規軍(中国国軍)になる。
 この中国国軍、つまり本当の中国軍の傀儡として旧台湾国民党が政権を握るということになる。
 中国を掌握するのは、解放軍から国軍へと衣替えした軍隊。
 そしてこの軍隊が旧台湾国民党を操って中国を政治支配することになる。
 端的に言えば、共産党解放軍と台湾国民党が手を握る、ということである。
 そして政治目標は独裁政治から選挙制度に基づく民主政治へ、というわけである。
 まあ、こういう線もありうるということの仮定だが。
 解放軍は国軍になりたくてしょうがない。
 国民党は大陸に帰りたくてしょうがない。
 この2つの組織が手を組んでも、単に共産党に代わるだけの独裁政治なら、賞味期限が切れている。
 やはり、選挙制度の導入ということをやらざるを得ないだろう。
 選挙制度導入への基礎づくりがしばらく続くことになる。
 これを担うのはやはり、選挙の洗礼を受けている、台湾政治家しかいない。
 そして選挙が行われる。
 ということは、限りなくロシアスタイルに近づくことになる。
 中国共産党の当面の仕事は、選挙制度が導入できるほどの生活レベルの向上になる。
 貧困から抜け出し、国民を都市化して、選挙制度に基づく政治ができるほどに、経済を成長させる。
 それが終わったところで、共産党独裁は終了する。
 つまり賞味期限切れを迎える。
 歴史の流れを追っていくとこういうこともあり得るということになる。
 よって、台湾国民党は決して中国大陸を諦めない




【日中の狭間にあって:台湾はどう動くか】



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中国で再評価される蒋介石:その意図は?

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朝鮮日報 記事入力 : 2013/10/20 08:56
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/10/20/2013102000039.html

【萬物相】中国で再評価される蒋介石

 中国・河南省鄭州市に「済国安瀾」という文字が刻まれた石碑がある。
 「国を救い、波を鎮める」という意味だ。
 中日戦争当時の1938年、国民党政府の蒋介石主席が日本軍の進撃を阻むため、住民に知らせないまま、黄河の堤防を爆破したいわゆる「黄河決壊事件」を記念したものだ。
 川の水が面積8000平方キロメートルを覆い、89万人が死亡し、1250万人が家を失ったとされる。
 中国人は蒋介石を非難する際、しばしばこの事件に触れる。
 碑文は「済国淹瀾(国を救おうとして、水に沈めた)」と皮肉っている。

 蒋介石は三つの戦争を戦った。
★.軍閥を打倒した北伐、
★.抗日戦争、
★.そして国共内戦だ。
 蒋介石は2回の戦争に打ち勝ちながら、国共内戦に破れ、49年に台湾に逃れた。

 430万人の正規軍に米国の支援まで受けたにもかかわらず、120万人規模の毛沢東の軍隊に敗れたのは、軍の腐敗と民心が離れたことが原因だった。
 黄河決壊事件で耕地が台無しになり、300万人が餓死した際にも、国民党幹部は蓄財に忙しかった。

 毛沢東は国共内戦当時、蒋介石を
 「独裁、内戦、売国の三位一体だ」
と批判した。
 米国人女性記者のストロング氏とのインタビューで
 「蒋介石と彼を支持する米国は張り子の虎だ」
と言い切った。
 共産党政権発足後、毛沢東は
 「蒋介石は中国最高の教師として、人民と共産党員を教育した」
と語った。
 蒋介石の失敗が、中国人が歴史のかがみとすべき「反面教師」の役割を果たしたという意味だ。

 中国の教科書に「走狗」「匪賊」として描かれた蒋介石に対する評価が、改革・開放によって変わり始めた。
 中国は80年代、浙江省奉化にある蒋介石の生家を修復し、文化大革命の際に破壊された蒋介石の母親の墓も復元した。
 2011年に中国社会科学院がまとめた全36巻の『中華民国史(1911-49)』は、蒋介石に対する再評価の象徴だ。
 同書は
 「蒋介石が義無反顧(正義のため、後ろを振り向かず、ひたすら前進する)を叫び、対日抗戦を決定した」
と書いた。

 今年7月に社会科学院のベテラン研究員2人が著した『蒋介石伝記』は110万部を売り上げた。
 蒋介石を40年以上研究した2人は、蒋の日記や秘密解除された文書に基づき、北伐と抗日戦争の功績を客観的に記述した。
 中国がかつて匪賊として非難した蒋介石への評価を変えたのは、
 台湾との「政治的統一」を念頭に、台湾人2300万人の支持を得るのが狙いだ。
 統一が現実として近づくほど、蒋介石を毛沢東と共に20世紀の英雄として再評価する動きが活発になりそうだ。





【日中の狭間にあって:台湾はどう動くか】



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2013年10月18日金曜日

中国と台湾の政治対話に水を差す: 「一つの中国」への言及

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WEDGE Infinity 2013年10月18日(Fri) 
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3252

中国と台湾の政治対話に水を差す:「一つの中国」への言及

 2013年10月11~12日に第1回両岸平和フォーラムが開かれた。
 全国台湾研究会、台湾21世紀基金会など14の両岸の民間組織、学術機構の共同主催の会議で、テーマは「両岸の平和、共同発展」というものだった。
 中国と台湾のあいだの交流は形式的に民間によって行われており、テーマもこれまで経済、貿易関係に関するものだったが、今回初めて相互信頼、外交問題、平和構造といった政治、安全保障分野を取り上げたことで注目された。

 これに先立つ10月6日、習近平国家主席が台湾との政治対話に積極的な姿勢を示していたこともあり、このフォーラムへの注目はさらに高まった。

 会議の開幕式には、張志軍・党中央台湾工作弁公室主任兼国務院台湾事務弁公室主任が出席し、挨拶した。
 党と政府の台湾問題を主管する部門のトップである張の発言に注目したのだが、その発言からは交流促進というよりは、むしろ期待に水を差すのではと思われる発言の方に目がいった。

 中国側は、台湾との政治交流をどのように考えているのだろうか。

■「一つの中国」に2度も言及した張志軍の発言

 10月12日付『人民日報』は、張の挨拶をどう伝えたのだろうか。
 6面に開幕式の様子を伝える記事が比較的大きく掲載された。
 張の主な発言は以下のとおりである。

<<<<<<<<<<<<<<<<<<<
 「両岸関係発展過程で、政治争議はしばらく棚上げにするが、完全に長期的に回避することはできない。
 『経済だけで政治はない』というやり方は持続しない。
 両岸の経済、文化の交流、協力を促進すると同時に、両岸の矛盾対立の解決に努力し、両岸も政治関係に対し情にも理にもかなっている手はずを整えてこそ、たえず両岸の政治的相互信頼を増進し、両岸の民衆の重大な関心事を解決し、両岸関係の持続的平和的発展に対する自信を増強し、両岸の平和、共同発展のビジョンを実現することができる」

 「大陸と台湾は一つの中国に属することを堅持することが、両岸関係の平和発展を確保する共同の政治的基礎であり、両岸の政治対立問題を話し合い解決する根本的立脚点である。
 両岸のあいだには多くの政治対立があるが、一つの中国の枠組みを動揺させ、損なうことはできない。
 両岸のあいだのあらゆる政治対立問題は、この枠組みで適切は解決方法を模索すべきである。これが緩めることのできない最低ラインである」

 「民間の政治対話を展開することは、各界の積極的な思考を促進し両岸の政治対立問題を解決する実行可能なプロセスに有利であり、今後の両岸が関連問題を話し合い解決するために受け入れられる方案を模索することに有利であり、両岸の政治対話、話し合いをスタートさせるための融和な雰囲気を作り出すことに有利であり、参考にできる経験と方法を提供することができる」
>>>>>>>>>>>>>>>>>

■台湾との政治対話を無条件に進めない意思表示

 このファーラムに先立ち、習が10月6日にAPEC首脳会議の場で、台湾前副総統の蕭万長・台湾両岸共同市場基金会栄誉董事長と会見した。
 その際に政治対話について次のような踏み込んだ発言をしていた。

<<<<<<<<<<<<<<<<
 両岸の政治的相互信頼を増進し、共同の政治的基礎を打ち建てることが、両岸関係の平和発展確保のカギである。
 長期的に見て、両岸に長期にわたり存在する政治対立の問題は結局一歩一歩解決しなければならない。
 これらの問題を次の代に送ってはならない。
 われわれはすでに何度も示している。
 一つの中国の枠組みで両岸の政治問題は台湾と平等な話し合いを進め、情にも理にもかなった手配をしたい。
 両岸関係における処理すべき事務に対しては、双方の主管部門の責任者が会って意見交換すればいい。
>>>>>>>>>>>>>>>>

 張自身には台湾との関係を方向づける権限はなく、張の発言が中国と台湾の政治対話に積極的な姿勢を示したのはこの習の発言に沿ったものである。

 他方、張は「一つの中国」に2度も言及し、
 「動揺させ、損なうことはできない」
 「緩めることのできない最低ライン」
と位置づけたことは、緊張感を増しているようにすら感じられる。
 政治対話への積極性とは一転、政治対話を無条件で進めるものではないという中国側の意思を示している。
 初の民間政治交流の場での挨拶だけに、期待感は強かったかもしれないが、「一つの中国」発言はこれに水を差した。

 「一つの中国」とは、台湾は中国の不可分の領土であり、中国は一つであるという主張であるが、中台間でその解釈は異なり、争点となってきた。
 そのため、最近では棚上げされ、実務的な交流を進展させていた感がある。

■なぜ「一つの中国」に言及したのか

 政治対話のきっかけになるかもしれない場で、張が「一つの中国」を2度も持ち出したこと、そしてそれを『人民日報』が報じたことは、なんらかの意味があると考えるべきだろう。

 一つには、10月12日に外交部が、欧州議会が10月9日にEUと台湾の経済貿易関係の決議を採択したことを次のように非難している。
 「民間の経済貿易交流の展開に異議はない。
 しかし、公的関係の発展には反対する。
 中国とEUの関係の大局から出発し、一つの中国の原則をしっかりと守り、台湾に関する問題を慎重に処理し、台湾と公的交流を進めない、いかなる公的性質を有する協議に調印しないことを希望する」。
 そのため、張の発言はEUとの公式な関係を深めようとする台湾に対し、クギを刺す目的があったとみることもできる。
 それならば、個別事案への対応で出てきた「一つの中国」であり、中国と台湾の関係改善に大きな影響はないかもしれない。


 もうひとつの見方もできる。
 台湾との政治対話を進めることが、習が自らの権威を高めるために熱心であると見られている点である。
 台湾統一は中国共産党に残された悲願である。
 かつて、江沢民が自らの権威を高めるために香港返還を利用していたことと相通じる。

 しかし、党内には台湾との安易な政治対話推進に反対するものもいれば、習が進めることには何でも反対しようというものもいる。
 習自身も政治対話に踏み切れるだけのリーダーシップを固めているのか、それともリーダーシップを構築するための「賭け」なのか。

 いずれにせよ、習はバランスをとるために、「一つの中国」に言及しなければならなかったものと思われる。
 そして張はその意向を受けて発言しているということである。
 台湾側にとっては、警戒感を呼び起こされているはずであり、
 「一つの中国」という考え方が依然として政治性を持っている限りは、中国と台湾の政治対話が進むようには思われない。

佐々木智弘(ささき・のりひろ)
日本貿易振興機構アジア経済研究所東アジア研究グループ長
1994年慶應義塾大学大学院博士前期課程修了、同年アジア経済研究所入所。北京大学、復旦大学、中国社会科学院の客員研究員を経て、現在日本貿易振興機構アジア経済研究所東アジア研究グループ長。共著に『習近平政権の中国』(アジア経済研究所)、『現代中国政治外交の原点』(慶應義塾大学出版会)。





【日中の狭間にあって:台湾はどう動くか】



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2013年10月17日木曜日

台湾滞在者も納得、現地の人に聞いた日本人と台湾人の意外な見分け方とは?

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●台湾に住んでいるときによく「日本人と台湾人はどこが違うか」と聞かれた。そんな時、私はいつも「だいたい同じ」と答える。写真は台湾。


レコードチャイナ 配信日時:2013年10月16日 23時47分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=77960&type=0

台湾滞在者も納得、現地の人に聞いた日本人と台湾人の意外な見分け方とは?

 台湾に住んでいるときによく「日本人と台湾人はどこが違うか」と聞かれた。
 そんな時、私はいつも「だいたい同じ」と答える。

 実のところ、ファッションをみれば十中八九検討はつく。
 若い女性は文字で表現しにくいが、普通のシャツやワンピースの肩の部分に丸く穴が空いている服を着ている。
 若い男性は、メガネをかけている。
 お年寄りになるとグッと難易度は上がって、分からなくなる。
 日本でも、おじさんなのかおばさんなのか分からない人がいるように、台湾でも日本人なのか中国人なのか、時には性別すらも見た目だけでは判断できない。
 年を重ねると無国籍・無性別になるようだ。

 若い人でも顔だけを見たのでは、私にはどこの国の人なのか分からない。
 そんなことを美容院でお店の人と話していたら、
 「日本人と台湾人の女性は歩き方で見分けられるよ」
と教えてくれた。
 なんでも、日本人女性は内股で歩き、台湾人女性は外股で歩くそうだ。

 その後、意識的に女性の歩き方を観察していたら、確かにその通りだった。
 個人的には、内股で歩く女性もおしとやか(死語か?)で魅力的だし、
 外股でサッサッと歩く女性もカッコよくていいと感じる。

 ただ、台湾人の道を歩くスピードはすごく遅い。

■武藤友真
2011年から台湾に留学。台湾の友人に誘われ、台湾北部の観光地をほぼ行き尽くす。台北で好きな場所は、台北駅地下のオタク街と松山空港近くの熱帯魚屋街。





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2013年10月16日水曜日

台湾・馬英九総統の訪中、中国政府が改めて拒否…APEC

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●(写真は「CNSPHOTO」提供)


サーチナニュース  2013/10/16(水) 12:56
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=1016&f=politics_1016_004.shtml

台湾・馬英九総統の訪中、中国政府が改めて拒否…APEC

  中国・国務院台湾事務弁公室の範麗青報道官は16日の記者会見で、
 「(台湾海峡)両岸の指導者が会うために、国際会議の場を借りる必要はない」
と述べた。
 台湾で、中国政府は2014年に北京で開催されるアジア太平洋経済協力(APEC)の会議への馬英九総統の出席を認めるべきとの声が出ていた。
 範報道官は、中国政府としての拒否の考えを改めて示した。
 中国新聞社が報じた。
 国務院台湾事務弁公室は、中国政府の台湾との交渉部門。

  範報道官は、
 「(台湾海峡)両岸の指導者が会うことは、両岸の中国人自身のことであり、国際会議の場を借りる必要はない」、
 「台湾側の関係者がAPEC首脳の非公式会議に出席する問題については、APECの関連備忘録の規則によって処理すべきだ」
などと述べた。

  範報道官が言う「関連備忘録」とは、1991年に中国大陸、台湾、香港が署名した「備忘録」を指す。
 同備忘録では、
 台湾と香港は国家ではなく「地域経済体」としての扱いを受け、
 それぞれの名称は「チャイニーズ・タイペイ」、「香港」とすることが定められた(香港は英国から中国への返還を機に、中国香港(チャイニーズ・ホンコン)と改称)。

  また、台湾の経済関連の閣僚や財界人はAPECの関連会議に出席できるが、外相や副外相は出席できないことが決められた。
 その後も中国はAPECに際して、台湾を国家扱いしないよう求め続け、台湾からの出席予定者が、拒否されたこともある。

  ただし2008年にペルーの首都、リマで開催されたAPECの首脳会議からは毎年台湾の連戦元副総統(国民党名誉主席)が出席し、中国の胡錦濤主席との会談も実現した。
 台湾は連元副総統を馬英九総統を代理する特使と位置づけた。

  2013年にインドネシアで開催されたAPECには、国民党の蕭万長前副総統が出席した。

  中国が、APECへの国民党の元副総統の出席を容認しはじめた2008年は、馬英九政権が発足した年でもある。

2013年10月8日火曜日

中国、20年武力制圧能力…台湾が警戒感:23年には台湾問題は大きな障害に

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●.4日、米華字紙・世界日報は記事「中国本土研究者が予言、2016年の台湾大統領選で民進党が政権奪回」を掲載した。清華大学当代国際関係研究院の閻学通院長は、2016年に行われる次回の台湾大統領選で民進党が政権を奪回すると予言している。資料写真。


レコードチャイナ 配信日時:2013年10月8日 16時3分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=77587&type=0

中国研究者が予言、2016年の台湾大統領選で民進党が政権奪回―米華字メディア

 2013年10月4日、米華字紙・世界日報は記事
 「中国本土研究者が予言、16年の台湾大統領選で民進党が政権奪回」
を掲載した。

 清華大学当代国際関係研究院の閻学通(イェン・シュエトン)院長は、16年に行われる次回の台湾大統領選で民進党が政権を奪回すると予言した。
 民進党の候補としては前回大統領選に出馬した蔡英文氏が選ばれる可能性が高いという。

 閻院長は李登輝元大統領が台湾独立を打ち出すこと、陳水扁元大統領の当選と第2期目の続投を予想するなどの実績を持つ。
 新刊『歴史の慣性』(台湾版タイトルは『次の10年』)で台湾の未来を予想している。

 16年に誕生する民進党政権は馬英九政権とは方針を変え、大陸との関係を疎遠にし米国との軍事関係強化に動くと分析している。
 一方で台湾独立を明確に打ち出した民進党の陳水扁元大統領とも違う方針をとり、国際舞台での台湾の役割拡大を目指すという。
 23年には台湾問題は米中関係にとって大きな障害となり
 その問題性は日本問題を上回ると分析している。



(2013年10月8日21時53分  読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20131008-OYT1T00938.htm

中国、20年までに武力制圧能力…台湾が警戒感

 【台北=比嘉清太】
 台湾の国防部(国防省に相当)は8日、2013年版「国防報告書」を公表し、中国軍について
 「2020年までに、台湾に対する全面的な武力(制圧)作戦をやり遂げる能力を獲得する計画だ」
と分析し、戦力増強に警戒感を示した。

 報告書は、中国は台湾情勢をにらんで戦略ミサイル190基余りを保有しており、2年前と比べて約10基増えたとの見方を示した。
 また、今年9月に沖縄県・尖閣諸島沖の上空を中国軍の無人偵察機が飛行したことに触れ、台湾も領有権を主張する南シナ海などへの無人偵察機投入に警戒感を示した。



レコードチャイナ 配信日時:2013年10月15日 8時40分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=77866&type=0

両岸(中台)統一が射程内に?―習近平と馬英九の接近


●10月6日、中国の習近平・国家主席は台湾の蕭万長・前副総統と会談。習近平は溢れんばかりの笑みを振りまいて蕭万長と握手した。来年北京で開催されるAPEC首脳会議に台湾の馬英九総統を招聘することを習近平は示唆したのだ。写真は「一国二制度による両岸統一」看板。

 インドネシアのバリで、APEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議が開かれる前日の10月6日、中国の習近平・国家主席は台湾の蕭万長・前副総統と会談した。
 習近平は溢れんばかりの笑みを振りまいて蕭万長と握手した。
 台湾は「台北」としてAPECに正式加盟しているが、それでも「一つの中国」を唱える中国は台湾総統の首脳会議への参加を認めて来なかった。
 しかしここに来て、風向きが変わりつつある。
 来年北京で開催されるAPEC首脳会議に台湾の馬英九総統を招聘することを習近平は示唆したのだ。

▼北京政府に寄り添う馬英九

 2005年4月29日、台湾の国民党主席であった連戦が訪中し、当時の胡錦濤国家主席と北京の人民大会堂で対面している。
 1949年、中華人民共和国誕生に伴い国民党が台湾に逃亡してから56年の年月が経っていた。
 中国はこの会談を「国共(国民党・共産党)第三次合作」として、大歓迎。
 ちょうど反日デモが激しく燃え上がっていた時期だ。
 憎しみに歪みながら日本罵倒を叫ぶ若者の顔と、「熱烈歓迎!」と手を振りながら国民党主席を迎える若者の笑顔は、不快なほどの対象を成していた。

 このとき、1992年に互いに「一つの中国」などに合意した「92コンセンサス」を再確認し明文化した。
 それからというもの、台湾の経済が中国なしには成り立たないほどの優遇策を、中国は台商(台湾商人)に提供し、大量の台商を大陸に誘致。
 その結果、2008年の総統選では、台湾独立派である陳水扁(民進党)が敗北し、独立を主張しない国民党の馬英九が総統に選ばれた。
 馬英九はもっぱら北京政府に寄り沿って台湾経済を中国に食い込ませ、中国を喜ばせた。

 しかし中国への依存度に反比例するかのように、馬英九の台湾における支持率は激減している。
 今年9月に入ってからの台湾の「年代テレビ局(ERA)」の民意調査によれば、馬英九の支持率は遂に一桁台の9.2%にまで下がったという。
 党内問題も抱えているとは言え、果たして来年のAPECまで持つかどうかさえ疑わしい。
 それでもなお中国としては経済だけでなく政治面においても本格的に乗り出し、
 台湾を「中国から抜け出せないスパイラル」へと誘い込み「両岸(中台)統一」に持って行くつもりだろう。

▼中国に嫌われたくない経済界

 このたび台湾に行き、中国の台湾経済への食い込み方には、ただならぬものがあるのを感じた。
 筆者は中華人民共和国が誕生する前の国共内戦(革命戦争)を中国吉林省長春市で体験している。
 1948年、国民党が支配する長春市は中共軍に食糧封鎖された。
 数十万の長春市民が餓死。
 筆者の家族もその中にいる。
 長春を脱出するときには二重になっている包囲網「●(上下を縦に重ねる)子(チャーズ)」の中に閉じ込められ、死体の上で野宿した。
 中共軍側の門が閉ざされたままだったからだ。
 筆者は恐怖のあまり記憶を失った。
 その原体験をまとめた『●(上下を縦に重ねる)子(チャーズ)――出口なき大地』を1984年に出版し中国語に翻訳。
 何とか中国で出版しようと試みてきたが、言論規制により未だ許可されていない。

 中国が民主化すれば言論の自由も得られるだろうが、その日まで生きていられるのかが疑わしい年齢になってしまった。
 そこで昨年リライトして出版した『●(上下を縦に重ねる)子(チャーズ)――中国建国の残火』を改めて中国語に訳し、やむなく台湾で出版することを決意した。
 台湾の出版社と交渉が成立したのだが、協力してくれた人物の言った言葉に愕然とした。
 その人は筆者に
 「台湾で出版する本には、どうか自分の名前を出さないでほしい」
と言ったのである。
 「なぜなら大陸との交易があるので、中共に不利な史実を残すことに加担したと思われたくない」
というのだ。

▼台湾にもやがて愛国主義教育が?

 共産党軍と戦って敗北し台湾に逃亡した国民党政府は、1987年になってようやく軍事体制下の戒厳令を解き中国反攻を諦めている。
 それでも90年代にはまだ中共への敵対的ムードが残っていた。
 それが今「中共に嫌われたくない」という時代に入っている。
 これではまるで台湾は精神的に「中国」に吸収されているようなものではないか。

 双十節(「中華民国」建国記念日)の10月10日、馬英九総統は中国大陸との関係は「国際的関係ではない。
 同じ中華民族だ」と言った。
 「国際的関係でない」ということは「国と国の関係ではない」ということだ。
 「一つの中国」を認めるということにつながる。

 習近平は10月6日の会談で「両岸問題を後の世代に残したくない」として、あたかも習近平政権内に両岸統一を成し遂げるような発言をした。
 しかし北京政府に付き従う馬英九の異常なほどの支持率低下は、台湾の国民が「統一」に「ノー」を突き付けていると見るべきだろう。
 「統一」は力関係からいけば「吸収」だ。

 その一方で「中共に嫌われたくない」という経済界の思惑。
 また一つ、言論規制の地域が増えていくことになるのだろうか。
 尊厳と精神性が勝つのか、実利と経済が勝つのか。

 一国二制度だろうと、吸収されれば香港と同じように、反日的で共産党を礼賛する愛国主義教育を強要される台湾がやがて訪れる。
 今はまだ世界で最も親日的な台湾。
 しばらく台湾問題から目が離せない。 

(<遠藤誉が斬る>第5回)
遠藤誉(えんどう・ほまれ)
筑波大学名誉教授、東京福祉大学国際交流センター長。1941年に中国で生まれ、53年、日本帰国。著書に『ネット大国中国―言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン―中国を動 かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ毛沢東になれなかった男』『チャイナ・ギャップ―噛み合わない日中の歯車』、『●(上下を縦に重ねる)子(チャーズ)―中国建国の残火』『完全解読「中国外交戦略」の狙い』など多数。


●『チャーズ 出口なき大地』 1984/07/14





【日中の狭間にあって:台湾はどう動くか】



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2013年10月7日月曜日

中国の発展の陰り:台湾はどう動くべきなのか、悩みの時代へ

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 かげりが現実化してきた中国。
 その影響で台湾が揺れている。
 これまでは中国の発展にフィットするように動いてきた台湾であり、中国は何もせずとも台湾のほうが勝手に中国に寄り添ってきた。
 しかし、落ち目の中国を前にして台湾の動きがぎくしゃくしてきた。
 中国派の馬総統と台湾派の王立法院院長の確執が政治を混乱させている。
 このままでは、台湾は中国から離れていく。
 危機感をつのらせる中国は政治対話を呼びかけることになる。
 
 原因はなんといっても、中国の発展の陰りにある。
 それが様々な波紋を近隣に投げかける。
 中国は再び昇ることはない。
 日本には「また陽は昇る」が期待できるが、中国にはそれがない。
 日本は幾度でも、落ちたらよみがえる可能性を持つ。
 中国には一度落ちたら、それっきりかもしれないという不安がつきまとう。
 おちていく一方と見たほうが適切。
 なら、近隣はどう対処すべきか?
 悩み多きアジアである。


日本経済新聞  2013/10/7 1:12
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM0601D_W3A001C1FF8000/

 習主席、台湾前副総統に政治対話呼びかけ 担当官庁トップ対面

 【バリ(インドネシア)=土居倫之】
 中国の習近平国家主席は6日、台湾の蕭万長前副総統との会談で
 「政治的な意見の相違は徐々に解決しなければならず、後の世代に残してはならない」
と述べ、台湾に政治対話を呼びかけた。
 中台の担当官庁トップも同日、初めて顔合わせをした。
 中台関係が経済協力の強化に続き、政治面でも動き出す可能性が出てきた。

 蕭前副総統は台湾の馬英九総統が代理としてアジア太平洋経済協力会議(APEC)に派遣した。
 会談は非公開で約30分間。中国は2014年秋に北京で開くAPECで、現役台湾総統の初訪問と首脳対話を実現したい考え。
 将来の中台統一を連想させるため、台湾住民の間では拒否感が強まる可能性がある。

 習主席らの会談に併せ、中国で台湾関係を担当する国務院台湾事務弁公室の張志軍主任(閣僚級)と、台湾で対中政策を所管する大陸委員会の王郁●(たまへんに奇)主任委員(同)も6日、両官庁トップとして初めて対面した。

 張主任は
 「中台間は800万人が往来しているのに、中台の責任者が会っていないのは良くないことだった」
と指摘。
 「王主任委員の訪中を歓迎する。自分も機会があれば、台湾に行きたい」
と相互訪問を提案した。

 張主任は10年に締結した中台の経済協力枠組み協定(ECFA)にも触れ「サービス貿易協定の早期発効を希望する」とも語った。

 中台はECFAに基づき、6月にサービス貿易協定に調印したが、台湾の与党の内紛に伴う立法院(国会)の混乱で、発効時期のメドが立っていない。
 王主任委員は
 「発効遅れの背景には、様々な複雑な原因がある」
と説明した。

 中国が台湾との経済協力を強化するのは、台湾独立派をけん制し、将来の平和統一を目指すのが狙い。
 台湾側には、ECFAの実績をテコに
 中国以外の国と自由貿易協定(FTA)を結びたいとの思惑がある。

 中台がECFAを締結するまでは、中国の反応を警戒して台湾とのFTA協議に慎重な国が多く、台湾はFTA締結実績が少なかった。

 会談後、記者会見した蕭前副総統は「中台関係の持続的な発展で合意した」と強調。「ECFAでの関税撤廃の項目拡大や紛争解決の議論を加速する」と語った。



ロイター 2013年 10月 7日 13:09 JST
http://jp.reuters.com/article/jpchina/idJPTYE99603W20131007

中国主席が台湾前副総統と会談、「中台問題解決の先送りできない」

 [ヌサドゥア(インドネシア) 6日 ロイター] -
 中国の習近平国家主席は6日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を控え、台湾代表団の蕭万長・前副総統と会談し、中台問題の政治解決を永遠に先送りすることはできないと述べ、政治対話の促進を呼び掛けた。

 中国国営の新華社によると、習主席は
 「海峡を挟んだ相互の政治的信頼を高め、政治的な基礎を共同で作り上げることは、両岸(中台)関係の平和的発展にとって極めて重要だ」
と指摘。
 「将来を見据え、双方の間に横たわる政治的な意見の相違は、徐々に最終的な決着をみなければならず、これらの問題を世代から世代へと先送りすることはできない」
と述べた。
 習主席は
 「『1つの中国』の枠組みの中で両岸問題について台湾と平等な協議を(われわれは)持ちたいと私は何度も語っている」
と述べた。
 中国政府と台湾当局は1992年、中台がそれぞれの解釈で「1つの中国」をとらえることで合意した。

 台湾の馬英九総統が就任した2008年以降、両岸関係は貿易や観光面で大きく改善したが、馬総統は時期がまだ適当ではないとして、政治対話の早急な開催を否定する考えを示している。
 蕭前副総統は記者団に対し、「双方ともに一層の理解が必要だ」と指摘。
 習主席と馬総統の会談の可能性については、自身と習主席の間で話し合わなかったと明らかにした。

 前副総統は
 「コンセンサスを見出すことできるならば、諸問題解決に向けた合理的な計画を徐々に見出すことができるだろう」
と話した。


 習近平は尖閣問題の失敗を繰り返したくはないだろう。
 とすれば、口先だけは先送り出来ないとは言うが、いますぐに行動できるかというとそうはいかないだろう。。




【日中の狭間にあって:台湾はどう動くか】



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2013年10月2日水曜日

台湾の中国文化教材に、中国本土で「難しすぎる」の評

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●29日、台湾で使用されている「中華文化基本教材」が5月に中国で出版された。内容は「論語」や「孟子」などだが、中国の教員から「難しすぎる」との声が上がっている。


レコードチャイナ 配信日時:2013年10月2日 16時25分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=77345&type=0

台湾の中国文化教材に、中国本土で「難しすぎる」の評

台湾の中国文化教材に、中国本土で「難しすぎる」の評―米メディア

2013年9月29日、ボイス・オブ・アメリカ中国語サイトによると、中国の代表的な出版社・中華書局が5月に台湾で使用されている「中華文化基本教材」を輸入・出版した。「論語」や「孟子」などの「四書」を内容としているが、中国の教員から「難しすぎる」との声が上がっている。

台湾では1956年から高校で「中華文化基本教材」が必修科目になっており、現在も46%の学校で5万3000人余りの高校生がこの教材を使って授業を受けている。全6巻の構成で、1~3巻が「論語」、4~5巻が「孟子」、6巻が「大学」と「中庸」に充てられている。

それぞれを抜粋したものだが、全体を網羅する内容となっており、中国の教員らは「今までの教材と比べて内容が5~10倍に増えた」と指摘している。しかし、実際には中華書局の版は台湾で使用されているものを元に難しい用語を改め、文体もわかりやすく書き直しているという。北京大学附属実験学校のある教師は大学では政治教育専攻だったが、古典に関する教育は十分受けたことがなく、他の多くの教員が同様だと話している。

輸入・出版元の中華書局も「授業に必要な時間は何とかなるが、教員不足が大きな問題となっている」としており、現在は武漢市第4中学と太原外国語第2学校、華中科技大学附属中学、鄭州市第5中学、北京大学附属実験学校で試験的に採用されるのみとなっている。

中国で古典に関する教育が廃れた原因は毛沢東が文化大革命で「批林批孔運動」(林彪と孔子とを合わせて批判した運動)を推進したことで、これにより儒教学者が迫害され、各地の孔子廟や関連する資料が散逸したことにある。




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